鹿児島県に脱原発知事が誕生したのは衝撃だ 三反園新知事は川内原発を止められるか

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川内原発1、2号機はそれぞれ10月、12月に法定の定期検査に入る。「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武代表は、「定検中に知事が特別な検査を要請する可能性がある」と予想する。

再稼働直後にトラブルに見舞われた川内原発

川内原発1号機は昨年8月の再稼働直後に復水器の細管が損傷して海水が混入するトラブルに見舞われたが、稼働を止めずに修理して済ませた。1、2号機の再稼働の前に実施された高経年化技術評価でも耐震安全性で余裕が乏しいと見られている機器が複数あることがわかっている。熊本地震では震度7の激震が2度にわたって起きたことから、繰り返しの強い揺れに設備が耐えられるかについても懸念が持たれている。

こうした問題について九電はきちんとした説明ができなければ、知事や県民の信頼を得ることは難しくなる。定検後の再稼働に影響が及ぶ可能性もある。

県は九電との間で締結した安全協定書の中で、「発電所周辺地域の住民の安全の確保および環境保全のため万全の措置を講じる」ことを九電に約束させている。設備の増設や変更、核燃料の輸送に際しても事前協議を義務づけている。また、県は発電所敷地内への立入調査権限を持ち、九電は住民の避難など地域防災計画への協力も約束している。安全協定書に基づいてこうした方策を活用することにより、今までより厳しい安全対策を求めることもできる。

40年超の運転に対して歯止めがかかる可能性もある。三反園氏は選挙前の記者会見で「川内原発1、2号機の運転は原則40年とする」と明言している。1号機は8年後、2号機は9年後にそれぞれ運転開始から40年を迎える。その時点で三反園氏が知事を続けていて、現在の方針が変わっていなければ、川内原発は廃炉に追い込まれる可能性もある。

強権的な伊藤知事の姿勢に県民は「ノー」

今回、脱原発の知事が誕生した理由として、敗れた現職の伊藤祐一郎知事による強権的ともいえる県政に対する批判の高まりが挙げられる。伊藤氏は熊本地震後も原発の安全性に懸念を示す市民の声に耳を傾けず、6月20日の知事選公約発表の記者会見では「川内原発1、2号機はあと30年は稼働せざるをえない」と発言。原則40年の期間を超過しての運転を容認する考えを示した。

「川内原発30キロ圏住民ネットワーク」の高木章次代表は、「川内原発の再稼働に際しては周辺自治体から民意の反映を求める数多くの意見書が提出されたが、ことごとく無視された。そのうえ知事が60年稼働(20年の運転延長)を持ち出したことで、多くの県民がおかしいと感じた」と指摘する。

また、伊藤知事は県の総合教育会議で「高校の女の子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか。そんなことより、植物の花とか草の名前を教えたほうがいい」と発言したことが、男尊女卑の暴言だと批判を浴びた。知事の肝煎りで開校した男子だけの全寮制中高一貫校で高校入学者が定員割れになるなど、政策の失敗も目立った。

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