――東京電力ホールディングスが設置した「第三者検証委員会」(委員長=田中康久弁護士)による福島第一原子力発電所の炉心溶融(メルトダウン)隠ぺい問題に関する「検証調査報告書」が6月16日に公表されました。同報告書では、事故時の炉心溶融隠ぺいについて、当時の清水正孝社長が「官邸側から、対外的に『炉心溶融』と認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」との記述があります。その一方で報告書では「清水社長や同行者から徹底したヒアリングを行ったが、官邸の誰から具体的にどのような指示ないし要請を受けたか解明するまでには至らなかった」とも述べています。
まず申し上げたいのは、「第三者検証委員会」を名乗っているが、東電が依頼した弁護士3名から構成されているということだ。第三者という以上、この場合は政府からも東電からも離れた立場の第三者でなければならない。そうでなく、東電が選んだ弁護士が「第三者」を名乗っていること自体、おかしなことだ。しかもそのうちの1名は、舛添要一・前東京都知事の政治資金に関する第三者調査委員会のメンバーでもある。舛添氏の時も問題になったが、頼んだ弁護士が依頼人に不都合な報告をするはずがない。そもそも、第三者による検証報告書の名に値しない。
第三者委は事情聴取なしに「官邸要請」と推認
――報告書を読んでどのように感じましたか。
当時の清水社長が炉心溶融を口止めしたと報告され、隠ぺいだったと現在の廣瀬直己社長も認めている。
これとは別に、内容で最も問題であるのが「官邸側」という表現だ。「要請を受けた……と推認される」と記述している。そこまで書き記すのであれば、「官邸側」とは誰なのかが明らかにされているべきだ。「官邸側」という人間はいない。
当時、官邸には総理大臣だった私のほかに、官房長官、官僚、東電関係者も詰めていた。清水氏に聞いても記憶がないという。「官邸側」という言葉を誰が語ったのか。聞いた人間も分からなければ、その人が誰から聞いたかも分からない。当時の官邸関係者に調査協力依頼があってしかるべきだが、私にも当時官房長官を務めていた枝野幸男・民進党幹事長にもいっさい話がなかった。
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