アメリカでの「コミュ力修業」の中で、驚かされたのは、コミュニケーションのありとあらゆる手法が心理学、行動経済学、脳科学などの「学問」の中で研究され、もっとも効果的なやり方が証明されている点だ。「謝罪」についての研究も膨大にあり、「いつ謝罪すればいいのか」、「何を言えばいいのか」など、実に様々なアングルから実験がされている。
そんな研究の中で、今年4月発表されて注目を集めたのが、「完璧な謝罪法」を探った「効果的な謝罪の構造についての考察」という論文だ。オハイオ州立大学の研究者らが755人の被験者を対象に行った調査で発見したのは、「許される謝罪」には6つの要素がなくてはならない、ということだった。
その6つの要素とは以下のものだ。
① 後悔の念を表す
(例)「本当に申し訳ない」「こんなことをするべきではなかった」
② 原因を説明する
(例)「自分の不手際であった」「慢心をしていた」
③ 責任を認める
(例)「私の責任である」
④ 反省の弁を述べる
(例)「猛省をしている」「もう二度とこんなことはしない」
⑤ 改善策を提示する
(例)「これまでの行いをただす」
⑥ 許しを請う
(例)「どうか許していただきたい」
潔く自らの責を認めることこそが
研究によれば、この6つができるだけそろった方が、謝罪としてより効果的で、最も重要なのは、③の「責任を認める」、最もプライオリティが低く、省いてもいいのは⑥の許しを請う、だったという。
例えば、仕事上でミスをしたとすれば、取引先に対しての謝り方はこうなる。
今回のミスの原因は○○○でした。(→ ②原因説明)
ひとえに私の不注意故でして、責任は私にあります。(→ ③責任)
心より猛省をし、二度とこういうことのないようにいたします。(→ ④反省)
今後、××と言う改善策を講じ、間違いを起こさないよう細心の注意をはらってまいります。(→ ⑤改善策の提示)
重ね重ね本当に申し訳ございませんでした。なにとぞ、ご理解の上、お許しいただきたくお願い申し上げます。(→ ⑥許しの嘆願)
最後の「許しを請う」は、場合によっては時期尚早、ずうずうしい、とみなされることもあるので、是々非々で判断したほうがいいだろうが、それ以外の5つの要素は網羅するに越したことはない。
多くの批判を浴びたベッキーや舛添前都知事の最初の会見では、これらすべての条件のうち、最も重要な「責任を認める」部分がすっぽりと抜け落ちていたことが、大きな敗因と言えるだろう。しかし、謝罪において、具体的にこれを言った、あれを言った、という「何を言うか」(コンテンツ)の部分よりも実は、もっと肝心なことがある。「どのように言うのか」(デリバリー)という部分だ。
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