謝っても許されない人が放つ「不愉快なズレ」

許されるための謝罪には6つの条件がある

アメリカでは、このデリバリー、特にボディランゲージ(表情、姿勢、声、ジェスチャー)の研究が盛んで、一つひとつの動作や一挙手一投足がコミュニケーションにおいて何を意味するのか、どういう印象に与えるのか、といったことが研究されている。一方の日本は、もともと、表情やジェスチャーの乏しいコミュニケーションが主流。そのため、この分野のノウハウはそれほど重視されてこなかった。

しかし、すべてが動画として、サイバー空間に残り、何百万回も再生されてしまう時代に、言葉以上のメッセージ性を持つボディランゲージの力を見くびることはできない。ましてや、対面のコミュニケーションの中で、話し手の「誠意」が試される謝罪のシーンでは、このボディランゲージの力は特に大きい。

「言行不一致」のコミュニケーション

そういった視点で、舛添前都知事の会見を読み解くと、「間違いだらけ」ということがわかる。最も大きな矛盾は、言っている内容とボディランゲージが大きく「ズレて」いることだ。「誠に申し訳ない」「心からお詫び申し上げます」「深く反省する」「恥ずかしい」などと言った言葉を散々使っているが、単に読み上げているような印象で、その「思い」が全く伝わってこないのだ。感情のこもっていないロボットのような物言いに違和感を感じた人は多かっただろう。

口で言っていることと、意味することが全く調和していない「言行不一致」のコミュニケーションは、聞く人を自然に不愉快にさせる。特に以下の3つが舛添氏にとっては致命傷だった。

① 口元

謝罪会見の時のトップの謝り方とその後の株価の推移を調べた面白い調査がある。UC Berkeley(カリフォルニア大学バークレー校)の研究者らの論文によると、トップが謝罪会見の席で笑うなど、ハッピーな表情や全く申し訳なさそうな表情でない場合、株価は下がり、悲しい表情の場合は株価の下落が一定程度、抑えられたというのだ。謝罪会見中の笑顔は、見る人に、話し手が真摯に反省をしていない、という印象を与える。そういった意味で、「笑顔は厳禁」なのだが、舛添氏の場合、時折、笑顔を見せる場面もあった。口元の作りが、ゆるんで見えてしまう顔の造作の人がいるが、舛添氏もそういった内の一人なのかもしれない。

② 視線

「反省の表情」と言えば、サルでも頭を下げ、伏し目がちになるのだが、残念ながら、舛添氏の目はデフォルトが見開いた感じなので、人を凝視するように見え、その視線には「申し訳なさ」がみじんも感じられない。これももともとの顔の造作といえば、そうなのだが、意図的に目線を落とし、ちょっとうなだれた感じが出ていれば、また印象も変わっただろう。

③ 話し方

舛添氏は能弁だ。夜中の番組で口角泡を飛ばしていたイメージも強いが、人を論破することに慣れた人らしく、早口で畳みかける。このよどみのなさが、謝罪会見では、あだとなる。悲壮な表情を浮かべ、絞り出すように話す場面、感情の高まりでぐっと言葉を詰まらせる場面、とつとつと語る場面もなく、「ペラペラ」と台本を読むような話し方ではなかなか共感を呼べない。

こうした点で落語家の円楽師匠や女優の高島礼子さんの会見を見れば、その差は歴然だ。言葉と動作のズレが全くない。謝罪会見は冒頭30秒を見るだけで、その成否がかなりわかってしまう。

不運にも「謝罪する側」に回ってしまった人は、「何を言うか」だけでなく、「言い方」「見せ方」に十分気を配る必要がある。といっても、無理やり「反省をしている自分」を演じるのではなく、本当に「申し訳ない」と言う気持ちを頭のてっぺんから、足の爪の先までの一挙手一投足に込めること。偽りの振る舞いほど、興ざめするものはない。「謝罪の王様」への道は結局、「真摯に、そして誠実であれ」ということに尽きるということだ。

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