巷間、2016年の1-3月期の公的年金の運用損は「5兆円規模」と言われている。これは、どの程度大きいのか。
もともと、国家予算等の大きな数字を考える時には、「1兆円」は日本の人口が大まかに1億2500万人なので、1人当たりにワリカンすると「8000円」だと考えると分かりやすい。もっとも、公的年金には、公務員を対象とする地方公務員共済(平成26年度で運用資産は約21兆円)、国家公務員共済(同8兆円)、私学共済(同4兆円)などがあり、GPIFの運用資産額(同137兆円)と合わせると、ざっと170兆円くらいあって、三共済がGPIFと同率で損益が出ているとすると合計の公的の損益は1.24倍に膨らむ。
つまり、大雑把には、GPIFが1兆円損をする時に、国民は1人当たり公的年金積立金の運用で1万円損をしていると考えるといい。
一家500万円の投資で20万円の損
もちろん、個々の国民の立場(会社員か否か、年齢は幾つかなど)や所得によって、公的年金とのかかわりの深さは異なるし、公的年金には税金も投入されているので話は複雑だが、たとえば、4人家族であれば、家族の将来の生活に備えて500万円(簡単にするために1人当たり125万円とした)ほど投資信託風の金融商品に投資していて、GPIFが5兆円損をする時には、一家で20万円損をする、と考えたらいい。
損の影響は、長年かけて表れると見ていいが、損は損であり、まったく影響しないと考えるのは正しくない。
ただし、一家にとって、将来の生活費に500万円でまったく足りないことからも分かるように、公的年金の将来の給付の大半は将来徴収される保険料と将来投入される税金で賄われており、公的年金の運用損益が将来の年金給付に与える影響は相対的に軽微だ。厚労省は、この辺りの事情を丁寧に説明すべきだろう。
また、「500万円持っている金融商品で20万円損をした」という状態は、将来の生活に備えて普通に資産運用をしている場合、「よくあること」であり、取り立てて大きな損というほどのものではない、という見方もある。とはいえ、国民は(1)損益の状況を早く知らせてくれないことと、(2)頼んでもいないのに一家(4人)で500万円もリスクを取った運用に投入されていること、の2点に関しては「怒ってもいい」と思う。よく考えられたし。
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