ネット選挙幕開けへ。SNS解禁でどうなる? 今年の夏から選挙が変わる

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全面解禁へ舵切る自民

全面解禁されれば、政策論争の場が広がるばかりか、有権者がフェイスブックなどを使って、知り合いに自分が支持する候補者の応援を呼びかけることも可能になる。選挙に無関心だった若年層の投票率アップも期待される。

ネット選挙解禁の推進派である民主党の藤末健三参議院議員も「地盤(支援組織)、看板(知名度)、カバン(資金)という選挙の障壁が少なくなるはず。政治に新しい風が起こる」と意義を訴える。

ただ、課題も少なくない。ネット選挙に詳しい明治学院大学法学部の川上和久教授は「ネット上では情報の質、真贋の見極めが大事。また、おカネをかけて外部委託すれば見栄えのいいホームページができるため、ネットの情報だけで候補者を判断するのは危険」と警鐘を鳴らす。

実際、ネット選挙を解禁して10年以上になる韓国ですら誹謗中傷やなりすましは絶えない。昨年の大統領選挙でも国家情報院の女性職員がネット上で野党候補をおとしめる世論誘導を試みた疑惑が浮上して政治的問題に発展した。

また、ある参院議員も「海外のネット選挙では誹謗中傷や大量のメール送付の問題が報告されている。ネットでのPRでかえっておカネがかかった例もある。まずは10年の与野党合意の範囲内の解禁が穏当ではないか」と指摘する。

一方、誹謗中傷やなりすましの懸念に対し、世耕官房副長官は「連絡先メールアドレスの表示を義務づけるほか、プロバイダ責任制限法も一部改正し、選挙期間中に問題となるコンテンツを削除申請後2日で消去できるようにするなど法制度を整備することで対処する」と説明する。

自民党は選挙制度調査会での検討を経て、できるかぎり早い法案成立を目指している。ただ予算審議などの関係で、国会のスケジュールはかなりタイト。「2月後半以降にすき間が1~2週間あるので、そこで審議できるかどうか」(国会関係者)という状況だ。微妙な温度差が残る中で、ネット選挙にどこまで踏み込めるのか。いずれにしても、有権者にとってもこれまでとは違う対応が求められそうだ。

(週刊東洋経済1月26日号)

(撮影:梅谷秀司)

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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