オーストラリア産の牛肉は安全と言えるのか ホルモン使用を巡るスタンスが米国とは違う

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日本で消費される国産牛肉は40%にすぎず、半分以上の60%が輸入牛肉である。その輸入牛肉の内訳を見ると、オーストラリアが35%、米国が20%、ニュージーランドが2%、その他2%(平成27年度農林水産省調べ)。オーストラリアと米国の2強がシェアを分け合っている状況だ。つまり、家庭や中食・外食などで偏りなく牛肉を食べている場合、全体の20%程度の米国産牛を口にする可能性がある、ということだ。

それにしても、スーパー店頭での販売を見ると国産牛肉が優位なのに、実際には輸入肉のほうが多いということは、どこで輸入肉が消費されているのか。考えてみるまでもない、外食や中食など、業務用の世界では輸入肉を使うことが多い。スーパーなど消費者が直接買い求める際には、パッケージに生産国が表示されていなければならない。多くの消費者がなんとなく国産志向を持っているから、スーパーは国産牛肉をメインに並べる。

一方、外食や中食では、表示内容に関する決まりはスーパーよりもずっと緩い。大衆向けの定食屋で650円で食べられる牛焼肉定食に「米国産牛肉使用」などと書かれていることなどないはずだ。しかし、高騰する国産牛肉との価格差はいまや2分の1、いや安いものなら3分の1程度。なんの断りもなければ、飲食店で食べる牛肉はほぼ輸入肉であると考えていいだろう。もちろん、コンビニエンスストアで人気の「牛カルビ弁当」が国産牛肉で製造されることはほとんどない。

さて、そうすると読者の頭にはこんな疑問がよぎるだろう。「輸入肉の半分以上を占めるオージービーフの場合はどうなのか」ということだ。

オージービーフと米国産牛肉の立場の違い

米国産は肥育ホルモンを使用しているものがほとんどだが、オーストラリア産のオージービーフはどうだろうか。米国と並ぶ畜産大国であるオーストラリアでは、肥育ホルモンの利用は認められている。現状では全生産量の4割程度に肥育ホルモンを使用しているという。ただし、ホルモン使用の有無は確認が可能で、また近年その使用量が減少傾向にある。

「確認できる」というのは、輸出に回される牛肉商品についてはMLSという格付けがなされており、その申請項目の中にホルモン使用の有無が記載されるようになっているからだ。そして、日本は大手商社やスーパー、外食店などが肥育ホルモンの使用を嫌うケースがほとんどであるため、店頭や大手外食チェーンで販売されるものに関してはほぼ肥育ホルモン使用はない状況ということだった(ただし例外があるので後述する)。

実は米国とオーストラリアの畜産物の市場構造はまったく違う。米国での牛肉の需要は自国内の消費向けがほとんどで、余剰分を戦略商品として輸出に回しているという言い方ができる。一方でオーストラリアは、生産した畜産物の5割以上を輸出している。つまり国家戦略的に重要なビジネスとして畜産を行っているのだ。だから、自国の基準がどうであれ、相手国の基準に合わせる姿勢で畜産を行うのが普通なのだ。

たとえば牛肉に関して言うと、オーストラリアの主要な顧客といえば日本、中国、ロシア、EUである。これらの国では肥育ホルモン利用は禁止されている。EUは昔から肥育ホルモンを禁止し、米国と論争を交わす間柄だし、また中国・ロシアは近年、使用禁止を強く明言した。したがって、これらの国に出荷するオーストラリアの生産者は、顧客の求めに応じて肥育ホルモンを使用しない。したら売れなくなるのだから、当然である。

ここでお伝えしておきたいことがある。

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