ここでフェアネスのために書いておくが、私はオージービーフの生産者団体であるMLAからマーケティングの仕事を受託したことが過去数回ある。また今後も仕事をする可能性はある。というのは、前回のコメント欄に、私が国産牛肉の仕事をしているから、米国産牛肉に対する批判をするのだろうという内容のものがあったので、書いておきたいのだ。確かに現在、牛肉のマーケティング業務を受けることが多くなっている。しかしそれをもって、「おカネをもらっている国の牛肉を薦めている」と思われるなら、それは順序が違う。
実際は「推薦できる国の牛肉の仕事だけを引き受けている」である。国産牛肉の仕事をするようになったのは、2007年ころより赤身中心の牛肉をもっとPRしなければならないと考えたからである。そしてオージービーフのPRの仕事をするようになったきっかけは、オファーを受けた際にこの肥育ホルモン問題について生産者団体に確認をさせてもらった。返答次第では断るつもりだったのだが、納得できる回答を得たので仕事を引き受けることにしたのである。ちなみに以前、編集に協力した牛肉関連の書籍に米国産牛肉の広告掲載オファーがきたのだが、それは丁寧にお断りしてもらった。すべて肥育ホルモンにかかわる私のスタンスからそうしたのである。
経営上リスクが大きいので、やるはずがない
ということで、私もオーストラリアにも数回足を運び、生産者団体と話をするたびにこのことをぶつけている。そのたびに言われるのが「少なくとも素性を明らかにして販売する肉に関して、内緒で肥育ホルモンを使用するようなことは、経営上のリスクが大きいので、やるはずがない」ということだった。先述のようにオーストラリアにとって牛肉は大事な国家貿易品目なので、輸出に向けた検査はかなり厳格に行われている。したがって輸入元から肥育ホルモン不使用を求められれば、使用していないものを出荷するのが普通である。
だから、店頭に並ぶオージービーフについて、疑問があれば店頭の販売担当者に尋ねてみるといい。もちろんアルバイトスタッフや陳列しかしない担当者ではわからないとは思うが、ちゃんとしたところであれば使用・不使用に関して回答をしてくれるはずだ。
ただし例外もある。格安のハンバーガーや加工食品のミートボールに使われる牛肉原料に「トリミング材」(筋や脂などの多い端肉を集めたもの)というものがある。トリミング材にもピンからキリまであって、日本向けの基準で生産された牛肉だけのものもあるが、格安の商品の場合はそうではなく、肥育ホルモン使用の部位も入っているものがあるという。そうしたものについては残念だが追跡できない、とのことだ。
そういうわけで、私は牛肉を食べる場合、可能な限り国産牛肉、難しければオージービーフ、どうしても選択肢がない場合だけ米国産牛肉を食べることにしている(仕事上、いっさい食べないわけにはいかないのだ)。
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