夏野剛(上)「オタクが100人のエリートに勝つ」 IT・ネットが変えた個人と組織の関係
ところが今は、どの会社に属していようが、自分さえその気になれば、いろんな情報を収集して発信もできる。やたらワインに詳しいヤツもいるし、なぜか政治に通じているヤツとかいるじゃないですか。それは自分の関心に沿っているし、半端じゃないんですね。
オタクでいい。専門といってもどこどこの大学で何を専攻していたから専門じゃない。自分の趣味、嗜好とか、何か気になってしょうがないとか。昔は、そのメーカーにいないとその改善ができなかったが今は自分で考えてみて、これがいいとかやろうと思えばできる。
そうすると、個人がどの組織に属しているかは、参考情報にしかならない。その人が何の能力を持っているか、何に関心があるか、何を情報発信しているかは、所属している組織からは、伺いしれない状況になっている。
組織と個人の関係がドラスティックに変わってしまったということを前提に、社会システム、会社の仕組み、そして法制度とか企業慣習とか商慣習とかを全部見直さないといけない。見直さなければならないことを怠ってきたから、日本は競争力が落ちている。
昔の経験が役に立たない
――組織のあり方が変わってしまったと。
たとえば社員の生かし方も、個性のある適材適所を徹底しないといけないのに、未だに人事ローテーションをやっている。1カ所に3年ずつとか。ジェネラリストでいろんなことを経験させるとか。
「昔の現場を知っている」といっても、今とは違うんですから、まったく意味ないんですよ。たとえば、15年前の営業の現場なんてITがないですから、参考にならない。そのころ現場だった人がやるより、ほかの会社で現場をやっている人を引っ張ってきたほうが、よっぽどいい。自分の会社で新しいやり方を導入できるから。