夏野剛(上)「オタクが100人のエリートに勝つ」 IT・ネットが変えた個人と組織の関係
新しいモノが出てきて戦いの仕方が根本的に変わっているにもかかわらず、変えられない。変えてない。しかも気づいてもいない。これが戦国時代だったら殺されてますよ。命を失っています。今は平和な状態なんで命は取られないけど。日本の企業業績はどんどん悪化する一方です。
――欧米は違う?
全然違う。米国の企業は、ITをものすごく積極的に採り入れました。もともと10年ぐらい前から、(スマートフォンの走りである)「ブラックベリー」を経営者がみんな持って、自分でメールなどを使って情報発信していますから。米国の経営者は、どうやって業務を効率化して、企業業績を上げるかというポイントから、ITを見つめていたんです。
日本の企業はどちらかというと、情報システム(部門)任せでやっていますよね。日本の社長のどれだけが、自分で自分のメールをちゃんと発信しているかどうかは、はなはだ疑問ですよ。
部下の上に立っていれば部下から情報が上がってきて、リーダーは正直言って「誰でもいい」というのが、日本の高度成長期につくられた仕組みでした。サラリーマン経営者のリーダーが何年かごとに替わっても、企業が変わらないのがベストな企業、誰がやっても同じ成果を出せるのがいい組織だと、僕も新入社員のころに言われました。
僕は絶対に違うと思いました。だって人によって、性格もやり方も違うじゃないですか。「いや違う」と(反論したら)「いい組織ってのはなあ」と、説教された思い出がありますが、それは古いパラダイムなんですね。リーダーの個性によって組織が変わってくるという、当たり前のことを認めなければならないのに、日本は個性を軽視してきました。
多様性のない組織は滅びる
――個性を軽視?
日本の大企業は終身雇用、年功序列、新卒一括採用を基本としてきました。言ってみればワークシェアリングですね。身分の保証と安定を求めてしまったがゆえに、本当は1人でできる仕事を2年ごとに交替したり、何人もでやったりする。世界全体が変わり、テクノロジーも変化する時代に、システムが追いついていっていない。人間のシステムがまったく追いついていない。