「LINEは日本製」って言い出したのは誰か? そうあってほしいという願望が錯覚に化けた

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

世界的な成長を収めているLINEが日本で生まれた、という物語は日本人にとって耳あたりが良い。そのため日本経済新聞をはじめとする大手メディアも『純和製』『日本発』という枕詞を使ってラインを紹介してきた。とりわけグーグルやアップル、フェイスブックなど米国発のサービスが世界中を席巻しているIT業界にあって、自分の国から、こうした素晴らしいサービスが生まれたのであれば、日本人としては大いに勇気付けられる

新聞記者時代の自分が無意識のうちに抱いていた「愛国心」のようなものを、ズバリと指摘された思いがした。

告白しよう。この本を読むまで、私自身もLINEを開発したのは日本人だと思い込んでいた。コニー、ムーン、ジェームズといったお馴染みのスタンプ・キャラクターは「日本の漫画文化が生んだハイテキストなコミュニケーション」などと得々と語っていた。しかし本書を読み進むと、キャラクターを考案したのは韓国人イラストレーターであることがわかる。知らないというのは恐ろしい。

「日本製品は素晴らしい。日本人は優れている」

ロンドンに4年間駐在したこともあり、「グローバルに」「客観的に」と自分に言い聞かせながら記事を書いてきたつもりだが、子供の頃から刷り込まれた価値観が消えることはなかった。

経済危機がネイバーを生み出した

一方で、矛盾も感じていた。日本製品が素晴らしいなら、日本企業が世界でこれほど勝てなくなったのはなぜか。本書はこう指摘する。

1997年から始まったアジア通貨危機によって、壊滅的なダメージを受けた韓国経済の中で、ネイバーという企業は誕生している。結果としては、こうした経済危機が大財閥に集中していた人材や産業分野にリセットをかけたことで、新しいIT産業を成長させる追い風になったとも言える(中略)果たして、日本はどうだっただろうか。皮肉にも、あまりに素晴らしい企業と「メード・イン・ジャパン」のブランドを生み出してきた歴史にとらわれて、インターネット産業が起こしつつあった巨大な産業パラダイムシフトに、日経新聞をはじめとするメディアも含め、きちんと目を向けてこなかったのではないだろうか

その通りだろう。

次ページネットを過小評価した代償
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事