絶好調LINEの「死角」に切りこんだ 増殖するプラットフォーム、無視できない不満の声
4月1日に世界の登録ユーザーが4億人を突破した、モバイルメッセンジャーアプリのLINE。週刊東洋経済4月26日号(21日発売)では、その躍進の秘密と課題を分析。「LINEの死角」と題した特集を組んだ。
LINEにも、急成長企業ゆえに多くの死角がある。現在推し進めている世界戦略では、フェイスブックが約1.9兆円で買収したワッツアップメッセンジャーが欧米に立ちはだかり、中国では中国版LINEとして知られる「微信(ウェイシン、英語名WeChat)」が存在する。
登録ユーザー4億人のうち日本ユーザーは5000万人で、残り3億5000万人は海外ユーザーによって占められている。しかしその内訳を見るとLINEはタイ、インドネシア、インド、台湾などで高シェアを誇る一方、欧米・中国では十分に存在感を発揮し切れていないのだ。
4月10日の新経済サミットでLINEの森川亮代表取締役社長 CEO(Chief Executive Officer)は、「来年には10億人以上」という目標を掲げた。その大台へ到達するには、スマートフォンが普及し、かつ巨大な人口がある欧米・中国エリアを切り崩していく必要がある。
外部事業者から不満の声も
2012年7月にスタートし、徐々に領域を広げているLINEのプラットフォーム戦略も現在曲がり角を迎えている。プラットフォーム戦略とは、外部の事業者と連携してメッセンジャー以外の様々なサービスを提供していくことだ。ところがここに来て、その外部事業者である広告主やサードパーティと呼ばれるゲーム開発会社は、LINEに対し不満の声を漏らすようになっている。
LINEの広告商品については「価格設定が強気過ぎる」、「(スマホに情報が直接届く)プッシュ通知が必ずしも良いとは思わない」(複数の広告主)。同じく複数のサードパーティからは「レベニューシェア(売上分配率)が極端に高く、手元に売り上げが残らない」「リリースまでの審査が厳しすぎる」といった声が上がっている。LINEはこうした声に、向き合わなければならない。
詳細は特集に譲るが、外部事業者にとってLINEのプラットフォームが魅力的に映らない背景には、LINE独特の資本関係が影響している。LINEが近く株式上場を控えるとされる中、親会社の韓国NAVERが自前のリソースを使って企業価値を引き上げようとしていると見られるからだ。
本特集では、それを裏付ける内部証言や、NAVER出身者が要職に就いた4月1日付けのLINEの体制刷新について記載している。
これらの課題について、LINE自身も「死角だらけ」(サービス全体を統括する、舛田淳上級執行役員 CSMO(Chief Strategy & Marketing Officer))と状況を認識している。LINE自ら布石も打っている。
4月23日、LINEは世界戦略の強化に向け、広告主や広告代理店から200人弱招いてマーケティングセミナーを開催した。セミナーでは、アジアにおいてLINEがスマホ広告としてどのように活用されているかを紹介。冒頭、LINEの出澤剛代表取締役 COO(Chief Operating Officer)は、「日本のビジネス界にとって成長市場であるアジアで、LINEをビジネス拡大に活用してもらいたい」と挨拶した。