絶好調LINEの「死角」に切りこんだ 増殖するプラットフォーム、無視できない不満の声

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活用事例としてまず挙げられたのが、日本に次ぐ規模の2400万人のユーザーを抱えるタイ。母親の死を悲しむ娘を慰めようと、亡くなった母親のスマートフォンを使って、父親が娘にLINEでメッセージを送った――そんな実話を元にしたLINEのテレビCMをLINEは昨年10月から展開している。

タイではそのユーザー層の厚さから、日本とほぼ同じ広告事業の展開が行われている。企業がユーザーにメッセージやクーポンを送信できる公式アカウントは、企業の「友だち」になった人数が累計で1億6000万人に達した(3月7日時点)。企業キャラクターなどを使った「スポンサードスタンプ」は、「クレイジーな人気があり、1日535万回使われるほどの社会現象になったスタンプもある」(LINEプラスでASEANを担当するダリン・ファン氏)という。

さらに、海外では初となる「LINEマストバイスタンプ(企業の商品購入者にスタンプを配布できる広告商品)」も今年4月から販売を開始。既にタイで100店舗以上を展開するレストランチェーンにおいて、限定メニューを頼むとスタンプがもらえるというキャンペーンが好評を博したという。LINEの田端信太郎上級執行役員法人ビジネス担当は、「タイの成功事例を手始めに、これからは海外でも広く実施したい」と話した。

2300万人の人口に対し1700万人がLINEを使っているという台湾では、公式アカウントが楽天をはじめとする日本企業や、現地企業に広く使われているのに加え、ユニークな取り組みがいろいろ行われている。

今年1月25日から4月27日までの期間限定で、台北において世界初となるLINEのテーマパークを運営。これまでに台湾内外から35万人の来場者を集めたという。中国の旧正月である春節には、LINEキャラクターのトラックが台湾を一周し、内部を見ようと人々が長蛇の列をなした。LINEへの人々の熱狂度は日本以上かもしれない。

中国戦略が初お目見え

LINEプラスで中華圏を担当するフランク・リー氏も登壇。ベールに包まれていた中国戦略も明らかになった

微信に対して劣勢にある中国でも、LINEはセミナーの場で戦略の一端を明らかにした。地域・年代とも満遍なくユーザー獲得を狙う微信と異なり、「沿岸部の大学生やホワイトカラー層をターゲットにする」(LINEプラスで中華圏を担当するフランク・リー氏)と明言。ユーザー数は「(1700万ユーザーを持つ)台湾よりも多くのユーザーを獲得できている」(同)という。

さらに上海の地下鉄をLINEキャラクターのデザインにしたり、現地ユニクロの店頭に誘客の看板を掲げたりなど、オンライン、オフライン両方でさまざまな宣伝を行っている。ユーザーを増やし微信に対抗するため、追い上げに必死の様子がうかがえる。

広告主向けに複数国展開すれば割り引きする料金プランも明らかに

広告主向けには、「クロスボーダーパッケージ」という料金プランも明らかにした。これは複数カ国でLINEのマーケティングを行う広告主に対し、展開する国の数に応じて、契約金額の総額から値引きを実施するというプランだ。値引き幅は10%から30%まで揃っている。

今回のセミナーでは、まずは金城湯池のアジア各国から収益化を進める考えが見て取れた。今後はさらなるユーザー数の拡大と、プラットフォームの浸透の両立をいかに早く進めていけるかがカギを握るだろう。法人顧客の声に耳を傾けながら、どこまで高みまで登りつめられるだろうか。

長谷川 愛 東洋経済 記者
二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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