善意が暴走するPTAと町内会は変われるか 数々のナゾに挑戦する2人に聞く

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紙屋高雪
漫画評論家&ブロガー。1970年、愛知県生まれ。京都大学卒。30代のとき、引越し先の地方都市・H市で町内会にかかわり始める。著書は『町内会は、義務ですか?』(小学館新書)、『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(築地書館)など。ブログ「紙屋研究所」(撮影:今井 康一)

紙屋:ありがとうございます、僕も山本さんの本(『PTA、やらなきゃダメですか』)を興味深く読ませてもらいました。

僕が山本さんのPTA改革について一番驚いたのは、保護者間の合意を作るのに相当労力を使っているな、という点です。アンケートも丁寧にやっているし、反対意見の人たちにも、ちゃんと向き合っている。10人ぐらいしか集まらない総会も、めんどくさがらずに、しっかりと開いていますよね。

先生や学校からも、いろいろ意見があったのではないですか?

山本:そうですね。僕が会長2年目のとき、PTAを強制ではなく任意で楽しくやるものに一気に変えようと、みんなで相談して、新しい規約案までつくったんです。それを校長先生に見せたときに、「それは、あまりにも早すぎる」ということで、ストップがかかったことがあります。

「趣旨はわかるし、賛同もするし、すごく理想的だと思う。でも実際に任意(加入)にすると、ごそっと会員が抜けてしまうんじゃないか」とか、「役員を同じ保護者ばかりが何度もやることになるんじゃないか」ということを、心配されました。

それは校長先生の考えというより、前のPTA会長や、町会長さんなどの心配を感じ取って、僕に伝えてくださっていたんですけれど。

紙屋:そこで、みなさんで改めて話し合われたんですね。

山本:ええ、一度立ち止まって、役員メンバーと議論をしたり、いろんなことを調べたりしました。

そのとき、ある町会長のご自宅に改革案の説明をしに行ったとき、こんなことを言われたんです。「私はずっと長くPTAを見てきているけれど、波があるんだ。PTAは、いい波のときはみんなやるけれど、悪い波のときはみんなやりたがらない。今、山本くんがやっているときはいい波のときだけれど、そのあと、このやり方は続くのか?」と。

でも僕の中では、「今のままのやり方では、PTAは続かない。変えないと、存続すらできない」という思いがあったので、それを伝えたら、「じゃあ“お試し”ということで始めてはどうか」と言われて、なるほどと思いました。

それで規約は変えないまま、いったん“お試し”という形でやってみることにしたんです。それを見れば、保護者や学校の先生、地域の人たちに、僕らのやろうとしていることがわかってもらえると思ったので。

結果的には、それがすごくよかったと思います。そのお試し期間で、みんなの理解が進んだので。もしあのまま強引に進めていたら、うまくいっていなかったかもしれません。加入者が減るのではないかと心配している人もいましたが、実際はほとんど減りませんでした。

「緊急公聴会」で反対意見を“拝聴”

紙屋:といっても、保護者からの反対意見もきっとありましたよね。それには、どんなふうに対応されたんでしょう?

山本:総会で最終案を説明したとき、反対意見も聞きたかったんですけれど、出ないんですね。どうも、そういう全体的な場では、反対意見は発言しにくいらしく。

それで「緊急公聴会」というのをやったんです。金曜と土曜の2回、僕が会議室でお待ちして、ご意見がある保護者の方に来ていただきました。部屋のはじっこのほうで、ほかの役員も話を聞いているんですけれど。

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