「財多ければ必ずその志を失ふ」の教え
「高い学費を返済するため」という理由もありますが、大きな変革を起こす力のある人たちが、体制側の「小さな成功」の型にはめられていく様を、現代インドという特殊な世界で目の当たりにしたような気がしました。資本を持っている側にしてみれば、敵に回すとやっかいな相手が、それくらいで自分の飼い犬になってくれるなら安いものです。資本主義のカラクリといってもいいでしょう。
もちろん「小さな成功」と言っても、年収が数千万円というような、日本人の平均から見てもべらぼうに高い所得を得るインド人もいます。その後、さらに成功を重ねていけば、世界に名だたるグローバル企業のCEOとなるなどして巨万の富を築くということも不可能ではありません。しかし私はそれでもあえて、それを「小さな成功」と呼びたいと思います。どんなに世間的に成功したとしても、最初の自分自身の大きな志の在り処が分からなくなってしまったら、それは本当に成功と呼べるのでしょうか。
「MBAは成功へのパスポート」などとは言えませんが、たしかに「小さな成功」への優待券くらいにはなるかもしれません。でも、過度の期待は禁物です。ビジネススクールに行って、一流企業のCEOになれたとしても、ガンジーにはなれません。
それでもなお、大きな願いを胸にMBAに挑戦される方は、道元禅師の「財多ければ必ずその志を失ふ」という言葉を座右の銘として、取り組まれてはいかがでしょう。カネで動かない人間こそが、志を貫徹し、新たな道を成就するのです。
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