「1人ブラック企業化」するしかない父親たち

理想を追う夫ほど、都合良く利用される

子供が2歳のとき、夫は円形脱毛症になった。円形脱毛症はどんどん広がり、頭髪はまったくなくなった。気づけば全身の毛が抜け落ちていた。ストレス性の全身脱毛症だった。子供が4歳になった今でも、毛髪はほとんど復活していない。

男も女もキャパオーバー

OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、日本の男性はOECD加盟国の平均的な男性の仕事と家事の合計時間よりも長く働き、さらにそのうえで62分間の家事を毎日担っている。いかに過酷な状況かがわかるだろう。

景気停滞期に入り、女性も賃労働に従事する必要性が高まったため、男性も家事や育児を担っていこうという話だったはずである。しかしそもそも男性にはそれを引き受けるだけの余裕がなかったのだ。

男性からすれば「これ以上無理を言うなよ」ということになるし、女性からすれば「家事や育児を押しつけられて納得いかない」ということになる。その軋轢は「産後クライシス」や「家事ハラ」という言葉となって表れた。

「産後クライシス」とは出産後の夫婦仲が険悪になることをいう。特に妻から夫への愛情が急激に冷めるのだという。もちろん原因は複合的なのだが、当初は「育児や家事を妻任せにする夫が悪い」という夫原因説まで流布した。

「家事ハラ」は、家事に取り組む夫に対し、妻がダメ出しをすることで夫の意欲をそぐという意味で登場し、脚光を浴びた。これに対し、「今まで家事をやってこなかったから下手くそで、それを指摘されたからといってやる気をなくすなど、この期におよんで世の男性はまだ女性に甘えるつもりか」という批判が多く上がり、炎上した。

いずれも夫婦間の対立が社会現象化したものだ。「結局男と女どちらが悪いのか」という社会的論争に発展した。しかしこの論争は不毛だ。どちらが悪いわけでもない。どちらもキャパオーバーなのだ。

男性であれ女性であれ、今、多くの労働者が「仕事と家庭の板挟みになっている」と感じている。21世紀型の家庭中心のライフスタイルと、1980年代の企業中心のライフスタイルの板挟みともいえる。

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