韓国のお年寄りは、地下鉄で宅配をしている 無料パスを活用、「安価で丁寧」と評判は上々

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朴さんは、貿易会社を定年退職後、事業を2つほどやり引退。現在は奥さんと二人暮らしで年金は月に32万ウォン(約2万9000円)ほど。それでも、結婚した子どもたちが近くに住み、生活費もわずかだが支援してくれていて余裕があるほうだ。地下鉄宅配による収入もあって、「贅沢はできませんが孫たちにお小遣いも上げられるし、十分」と言う。そして、何より外で働ける喜びは何事にも代えがたいと笑う。

「仕事がうまくつながって次々と届け先ができると、なんていうんでしょう、心躍るというか。これまで1日に最高10カ所回ったことがありますよ。家族は心配して辞めてくれなんて言いますが、80歳までは続けたい」

朴さんが所属する会社には80人ほどが登録していて、その7割が65歳以上の高齢者。最近では若い年齢の宅配人も増え、こちらは「青年地下鉄宅配」などと呼ばれている。

「老後は子どもが面倒をみる」は昔の話

韓国では2000年に高齢化率が7%を占め、高齢化率14%となる高齢社会には2年後の2018年に突入するといわれている。日本が高齢社会に入ったのは1994年。高齢化から高齢社会への所要年数は24年とドイツの40年、英国の47年などと比べると高速だといわれたが、韓国はさらに速く18年で突入することになる。

急激な変化に対策も急ピッチで進められてはいるが、最近の韓国では日本と同じように高齢者の貧困が浮上し、OECDの中で老人貧困率は49.6%(韓国保健社会研究院、2015年)とワーストワンだ。

社会構造の変化に伴う人々の意識の移り変わりも速く、昔は子どもの教育におカネをかければ老後は子どもが面倒をみてくれるという考えが当たり前だったが、それも今は昔。自身の親の世代と子の世代に挟まれた今の高齢者は、資金を親と子に吸い取られ、子の世代も自身の子どもの教育費などが重く、とても親世代を見られるような余裕はない。地下鉄宅配に従事する人の中にも金銭的事情から登録する人も多い。

誰にも等しく訪れる老い。高齢社会をどう構築していくか、ひとりひとりが老後をどう準備していくか――。日本も韓国も同じ悩みを抱える。
「年とることは難しい」――。昔、還暦を過ぎた先輩がつぶやいた言葉を思い出した。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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