韓国のお年寄りは、地下鉄で宅配をしている 無料パスを活用、「安価で丁寧」と評判は上々
目的駅に降り立つと再びメモ帳を取り出し、確認しながら歩いて行く。少し迷いはしたものの、無事、依頼先に到着した。荷物はビニールに入った布が一枚。宛先がマジックで書かれている。地下鉄宅配の常連だという依頼主は、「量がかさばらないときはあちこち寄って宅配するバイク便より地下鉄宅配が早いし安い。それにお年寄りの宅配は丁寧だから」と言う。
荷物を受け取ると宅配伝票にサインをもらう。会社に荷物受け取り完了を知らせるメッセージを送り、ビルを出るとまたメモを取り出して、今度は届け先までの行き方を携帯の乗り換え案内を使って確認した。
荷物は手で持たないのが朴さん流。手で持っているとなくしかねないからだという。地下鉄の駅に向かう前に背中に背負ったリュックに入れて、届け先の駅に着くとすぐに荷物を取り出した。メモを見ながら届け先を目指し、今回は迷うことなくほどなく到着。午前中に2カ所の宅配を終え、12時少し前に昼食。毎日愛妻弁当を持参し、この日のメニューは、五穀米のこぶし大のおにぎり2つとゆで卵ひとつ、リンゴ半分と間食にチョコパイ2つ。水の携帯は必須で、忙しい時は電車の中で食事することもある。
この日は午後3カ所を回り7時半過ぎに終了。帰宅は8時半を回っていた。
「遅くとも9時までには帰ってきて夕飯を一緒に食べようと妻は言いますが、仕事が入ると断れなくて、10時過ぎに帰宅することもあります」
一日の収入は約2400円
比較的軽い荷物を地下鉄を利用して運ぶため負担も少ないだろうと高をくくっていたが、さにあらず。地下鉄では必ずしも座れるわけではないので、立ちっぱなしの時もあり、体力に自信がある筆者(50代前半)も夜には疲労困憊、くたくたになった。
朴さんが登録している地下鉄宅配会社はバイク便やトラックを使っての配送も扱う宅配業者で、地下鉄宅配を始めたのは数年前からと言う。
「競争が激しいクイック(バイク便)の業界で価格が低廉に設定できることから始めました。募集は区や福祉館に求人を出しています。高齢者なので健康面での心配はないかとよく訊かれますが、面接でチェックしますし、今まで事故もないです。ただ、やはり高齢者ということもあって、連絡も頻繁にとるなど通常のバイク便より管理に神経を使います」
宅配料はだいたい6000ウォン(約540円)からで距離により料金が上がっていく。これはバイク便よりも30~50%安い価格だ。取り分は会社が3で宅配人が7。朴さんのこの日の収入は5カ所11時間30分労働で2万6600ウォン(約2400円)。土曜日は午前中勤務で月に平均60万ウォン(約5万4000円)ほど稼ぐというが、低賃金には違いない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら