「保険は成長産業だ、日本市場もまだ伸びる」 東京海上日動の北沢社長が語った

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──スペシャルティとは具体的には?

たとえば、サイバーリスクにかかる保険や会社役員賠償責任保険(役員が企業や第三者に与えた損害を補償するもの)がそうだ。こうした保険に対するニーズが大きくなる。グローバル展開する企業は、世界中でいろいろな株主が増えているし、それぞれの国で役員の賠償責任にどう対応すべきか悩んでいる。

昨年に買収した米国HCC社はこうした分野が得意であり、彼らのネットワークを使うことで、世界中で日本企業、日系企業のグループ会社をサポートできる。

それ以外にも、わかりやすい例では、スポーツ選手の年俸を補償する保険などもスペシャルティだ。米国では特にプロスポーツ選手の年俸が極めて高額だ。もし、有名選手が病気になったり、ケガをしたりしたら保険金で補償する。HCCはここでも、もっとも大きなシェアを持っている。

──自動車保険の収入で5割、火災を入れて7、8割という構造は過去40年ほど変っていない。変えられるのか?

そのとおりで、今まで日本の損害保険マーケットは、人口、所得が増えて、自動車、新しい住宅を買う。その中で自動車保険、火災保険を販売して成長し、代理店もビジネスを伸ばした。だが右肩上がりの時代は終わった。これからは停滞するか、10年後はしぼんでいくリスクに晒されている。今がまさに頭の切り替えをする時だ。

これから5年、10年を見据えて、次の時代がどうなるか。それが健康経営であり、スペシャルティであり、まだお話しできないが色々考えている。

社長自ら目利きになる

──HCC買収には約9000億円と国内金融機関として過去最大級の資金を投じた。狙いは何か?

もちろんわれわれもスペシャルティ市場で商品は作っているが、やはり一番ニーズが大きいのは米国であり、欧州だ。HCCはスペシャルティの専門家集団で、欧米で経験を積んだ本当のプロフェッショナルだ。スペシャルティは、アンダーライティングというリスクを見極める力、この目利きがいなければ難しい。HCCはこうした人材をたくさん抱えている。時間を買ったというわけだ。

彼らのノウハウをグローバルで活用して顧客をサポートしていく。また、国内でも彼らのノウハウでビジネスを伸ばすことができるだろう。HCCもグローバル展開する日系企業にあまり入り込めていなかったから、その意味でも非常に面白い。

きたざわ・としふみ●1977年東京海上火災保険入社。東京海上日動あんしん生命保険社長などを経て現職

──取り組みの進捗は?

ポスト・マージャー・インテグレーションというが、買収した後の相互のシナジーを出すための、ノウハウをいかに使って成長していくかという活動を今、ものすごい勢いで活発にやっている。

私は会社に入って39年で、そのうち25年間は商品開発をやってきた。損保、生保あわせて社内で一番の目利きは私だ。

日本市場が伸びないから海外の会社を買ったのだ、とマスコミの皆さんは思っておられるかもしれない。だが、日本はまだまだ十分に伸びる。私自身が目利きとなって、よい保険を世界中からいっぱい引っ張ってくる。保険は成長産業だ。

(撮影:尾形文繁)

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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