損保ジャパンの海外戦略は今期動くのか 損保大手好決算の裏で国内伸び悩み

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グローバル展開が今後を左右する(写真:taa/PIXTA)

損害保険大手3グループは2016年3月期決算でそろって過去最高益を更新した。主力の自動車保険の保険料収入が堅調で、損害率も改善した。火災保険では2015年10月の商品改定前に発生した駆け込みが保険料を大きく押し上げた。

首位の東京海上ホールディングスは当期純利益2545億円、MS&ADインシュアランスグループ(傘下に三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険を擁する)は当期純利益1815億円で、ともに四期連続の最高益。損保ジャパン日本興亜ホールディングスは合併に伴う費用(前期に795億円を計上)がなくなり、当期純利益は前期の542億円から1595億円に大幅に伸びた。

今期2017年3月期についても、東京海上HDが当期純利益で2650億円、MS&ADも1830億円と2グループがともに5期連続の最高益計画を掲げる。一方で損保ジャパン日本興亜HDは当期純利益が1400億円と減益を見込むが、これは損保ジャパン日本興亜ひまわり生命でシステム関連の先行投資負担を見込んでいるほか、米国子会社で前期一時的に計上した株式売却益が剥落することなどが主因。3グループとも今期も順調な決算を計画しているといえる。

熊本地震の収益への影響は小さい

4月に発生した熊本地震では、5月16日現在、損保全社で17万1942件の事故を受け付け、8万4422件の調査を完了。うち7万6580件について、すでに1233億円の保険金を支払っている(日本損害保険協会の5月18日付け発表)。

家計分野での地震保険は、民間の保険会社が査定や支払いのサービス主体となるが、制度は政府が再保険を引き受けることを前提として運営されている。1回の地震による損害額に対し、民間会社の責任限度額は全社合計で最大でも398億円までと決められており、すでに責任準備金として積み立てた保険料を取り崩して対応するため、損益には影響を与えない。

一方、企業の工場や事業所が火災保険の特約として契約する地震の拡張担保特約は、2017年3月期の決算に影響を与える。ただ企業が契約していたケースは少ないようで、発生保険金ではMS&ADが最大でも120億円、東京海上HDは約50億円、損保ジャパンも20億円と影響は限定的だ。

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