損保ジャパンの海外戦略は今期動くのか 損保大手好決算の裏で国内伸び悩み
数字上では引き続き堅調な計画を掲げる各社の今期決算も、その内訳を仔細にみると違った面が浮かび上がってくる。
国内損保事業では、各社とも火災保険の収入が前期から反動減となる。これは昨年10月に、保険料を2~4%程度引き上げたほか、これまで最長36年だった契約を最長で10年とする商品改定を行ったため。自然災害の増加を背景に、長期のリスクを引き受けなくなったもので、「安い保険料のうちに長期の契約を」と前期に駆け込み契約が大量に発生した。このため今後数年にわたって、需要の先食いが火災保険料収入の下押し圧力となると考えられる。
自動車保険の値上げ効果も一巡
自賠責を除いても保険料収入で約半分を占める主力の自動車保険でも、今後は保険料収入の伸びが鈍化しそうだ。自動車保険では厳しい収支が続いていたが、各社が2014年までに行ってきた値上げが寄与して、ここ数年、収益性は持ち直してきた。ただ長期分割払いの契約を除けば、その値上げ効果も一巡してしまう。
保険料の単価アップによる伸びが見込めないとなると、契約台数を増やして収入増につなげたいところだ。が、過去の蓄積を反映する保有契約台数自体は国内全体でまだ増加しているものの、毎年の新車販売台数が停滞する中では、今後は大きな伸びは期待できない。前期は東京海上が台数で伸ばし、単価アップと併せて4.1%増収と優位に立ったが、限られたパイを各社が奪い合う競争はさらに熾烈化しそうだ。
自動車保険の収支改善においては、損害率が低下傾向にあったことも大きく寄与してきた。損保ジャパンを例に取ると、等級制度を改定した2013年3月期以降、事故受付件数が8%、5.7%、5.4%と前期まで毎期大きく減少している。これは、「保険金が少額しか出ない事故では、保険金の請求により次年度以降の保険料がアップする事態を避けようと考える契約者が増えて請求件数が減っているため」と見られている。ただ、等級制度も改定から年数が経過してきており、今後はこうした効果も薄らぐと見込まれる。
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