損保ジャパンの海外戦略は今期動くのか 損保大手好決算の裏で国内伸び悩み

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業界内では、「自動ブレーキなどの普及が事故受付件数減少の一因となっている」との指摘も多い。ただ、近い将来には、各社が保険料を決める基準となる損害保険料率算出機構の参考純率が、自動ブレーキなどの効果も織り込んで見直されるとの見方が強い。そうなると、これも逆に保険料単価を下げるほうに働くことになる。自動車の電子化といった技術進歩については、修理費がかさむことで保険金単価のアップ要因となるのも悩ましいところだ。

東京海上、MS&ADは海外の比重が拡大

東京海上HDでは、今期は海外保険会社が稼ぐ当期純利益を1207億円、MS&ADでは550億円と見込んでいる。2社は買収会社の商品・ノウハウを既存の顧客基盤に活用するなどシナジーの創出を進める一方で、新興国などでは従来同様にチャネルの買収などM&Aを含めた地盤強化を図るものとみられる。

一方、損保ジャパン日本興亜HDは26日、利益で2倍近い水準を目指す中期経営計画を発表した。自然災害による保険金支払いの平準化など調整を行った修正連結利益を今期の1600億円から、2020年代の早い時期に3000億円にまで引き上げる。成長分野と狙いを定めて本格参入した介護事業の利益はまだ10億円ほど。目標達成には、介護や生保事業の急成長に加え、先行する2グループに水をあけられ、今期の利益が150億円ほどしかない海外での大型買収が不可欠となる。

国内の損保市場が人口減少や若年層の車離れなどを背景に、長期的には大きな成長が期待しづらい中で5年、10年後さらにその先の未来図をどのように描くのか。国内外でいかに成長の牽引役となる事業を構築し、リスク分散、収益の安定化を図っていくか。最高益を謳歌しているここ数年の間に打つ布石が、損保大手3グループの命運を左右することになりそうだ。

 

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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