“体育会系”居酒屋では勝ち残れない 「塚田農場」APカンパニー社長に聞く

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われわれには5割の固定客がいる。チェーン店でこれができているところは少ない。リピート率にこだわるのは、路地裏の個人店と競争していかなければならないから。既存店売上高の前年対比は100%を超えて推移しているが、これはリピート率に比例している。昨年の弊社のリピート率は55%、今年も50%超を維持している。

お客様には来店回数に合わせてスタンプカードを配っている。スタンプカードは名刺のようになっており、来店回数に応じて“主任”から“会長”まで出世していく。来店回数が2回目までは主任、5回目までは課長といった感じだ。部長(7回目)になるともう常連だが、この部長がすでに5000人以上もいる。こうした常連を取り込む仕組み作りがうまく機能して、高いリピート客獲得につながっている。

商社など“川中”志向の新卒学生も集める

――外食業界では新卒採用に苦労している企業も多い。どうやって優秀な人を集めるのか。

外食も含めた食関連業界はメーカーや商社など“川中”に人気が集中するが、外食や小売りなど“川下”は不人気だ。その結果、優秀な人たちがメーカー、商社に集まり、製品のクオリティは日に日に進化している。一方で小売りや外食はいつまで経っても体育会系のノリで、「今日もテンション高く頑張るぞ」という世界から抜け出せない。

APカンパニーは自社で食材の生産を手掛けることで、食品商社のようなブランディングに成功している。「第1次産業を何とかしたいが農協に言っても何も変えられない」といった思いを持つ学生たちが、「APカンパニーなら第1次産業を変えられる」とたくさん入社してきている。たとえば大手ビールメーカーから内定を得た人間が、そっちを蹴って当社に来ているし、東京農大出身の社員も20人以上いる。

だから従来、飲食店だけやっていたら集まらないような人材を獲得できている。5~6年は店舗配属だが、その先はバイヤーや企画、コンサルタントなど、より高度な職種をやってもらうことになる。優秀な人たちだから製造業、販売業としてのポテンシャルが高く、そしてそれがアルバイトのマネジメントにもつながっていく。

――ただ、現状では売上高の9割を居酒屋が占めており、生産部門の売上高は1割程度だ。このことをもって製造・販売業といえるのか。

確かに売り上げのほとんどは飲食部門が稼ぎ出している。大事なのは製造・販売業の会社であるという、われわれとしての位置づけだ。

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