安倍首相、捲土重来の条件 信頼なき圧勝

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325議席(今回、自民党と公明党が獲得した議席数)と327議席(05年の郵政解散後の衆院選で自公が獲得した議席数)、奇跡的なまでに似通った数字である。

07年、安倍氏は国民の意に反して、政策アジェンダを経済改革からイデオロギー路線へとシフトし、郵政選挙で得た圧倒的な議席数を失うきっかけをつくってしまった。しかし今回の衆院選で、小泉氏から引き継いだときとほぼ同じ議席数を民主党の失政と維新の失速のおかげで取り戻した。

あのような形で首相の座を降りた氏にとっては、奇跡的な幸運であり、過去の失政から名誉挽回する千載一遇の機会を手にしている。この大きな政治力を、前回と同じ失政で混乱させてはならない。参院選までは失点をつくらないように控えめな政権運営を心掛けるだろうが、参院を取った後、国民がチェックを入れられなくなった段階で、本格的に“個人的な優先政策課題”に走るのではないか、という懸念を抱く人も多い。

賢い人と愚かな人の違い

仮に首相の時間を100%としたら、国民は30%を経済対策、30%を社会保障制度改革、20%を原発問題、20%を外交立て直しに使ってほしいのではないか。この配分を勝手に、たとえば50%憲法改正、30%国防軍設置、20%歴史問題にシフトさせては、長らくの保守基盤との信頼は果たせても、首相として国民全体の信頼を再び裏切ることになる。

国民が求める政策の優先順位はあらゆる調査で明らかだ。失業やデフレ、社会保障制度の破たん、財政赤字や原発問題は憲法を改正して解決できる問題ではなく、自民党が支持基盤に切り込むことで対処すべき問題だ。そして最悪のシナリオは各国で新指導部が誕生して雪解けが期待されているときに、外交紛争をしかけて緊張を高め、なし崩し的に進めてしまうことである。

かつて私が大学時代、コンサルタントの堀紘一さんの授業で、このような言葉を聞いた。

「賢い人は他人の失敗から学び、失敗を回避する。普通の人は自分の失敗から学ぶ。愚かな人は自分の失敗からも学ばない」

安倍首相が日本全体から、ひいては隣国を含めた国際社会から「賢い首相だ」と称賛されることを切に望む次第である。

現在、安倍氏が首相に返り咲いたことで中国や韓国では外交をめぐる懸念や期待が交錯して連日大きな報道がなされている。そこで年末にかけて、連載開始時に申し上げたように、私の愛する日本・韓国・中国の橋渡しになれるようなお話を、次回から二回にわたってお届けしたいと思う。

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