「時代の先を読んで、それに合わせて動くのではなく、世界がどうあるべきか考え、そこから行動していく。このメンターの姿勢に強烈なショックを覚えました」
メンターでなくても、大学周辺の起業家や投資家は、「スタンフォード大学ビジネススクールの学生です」と名乗れば、忙しい時間を割いてでも、必ず会ってくれるという。それは、スタンフォードの学生が「世の中を変える」可能性を持っていることを、信じているからだ。
「投資家は、若者からイノベーションが起きていることをよくわかっているんです。スタンフォードの学生なら、何かビジネスの種を持ってきてくれるんじゃないか、と期待を込めて会ってくれます。
だから、その期待に応えられないと、2度目のミーティングはありません。最初のハードルは低いけれど、2度目は厳しい、というのが現実ですね」
投資家は、つねに第2のチェンさんを探し続けているのだ。アメリカに残って起業することのやりがいと、スタンフォードの卒業生として、あるべき姿を実感した出会いだった。
一流のリーダーは正直であれ
「僕はこの授業を受けて、自分のリーダーシップスタイルを今後どう確立していけばいいか、1つの指針を得ることができました」
12年9月、石倉さんは、人生を変えるほどインパクトのある授業に出会う。スタンフォードの名物教授、アーヴィング・グロースベック教授の「Managing Growing Enterprise」(成長企業のマネジメント)だ。
グロースベック教授は、全米でも有数の起業家だ。1964年、ハーバード大学ビジネススクールで知り合ったエイモス・ホステッター氏と、ケーブルテレビ局を運営するコンチネンタル・ケーブルビジョン社を共同で創業。
アメリカのケーブルテレビ普及の黎明期に創業した同社は、その後、時代の波に乗り、80年代には、全米第3位のケーブルテレビ局となった。同社は、96年、110億ドル(約9000億円)で売却されている。
教授は、同社退社後、数々の企業で役員を務めながら、20年余にわたって、スタンフォードで起業家精神を教えている。
この授業では、1年目の「Leadership Lab」(リーダーシップ演習)から、さらに専門的な起業時のマネジメントやコミュニケーション術を学ぶ。
ここでも使われるのが、「ロールプレイ」演習だ。毎回、学生が何人か指名され、教壇で指定された役柄を演じていく。
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