スタンフォードで学ぶ、修羅場の人間関係

”俳優塾”さながらのロールプレイ演習

特徴的なのは、スタンフォードの卒業生が起業した会社の実例が、ケースとして出題されること。そして、授業の最後には、必ずご本人が登場する。たとえば、石倉さんの印象に残っているベンチャー企業のケースは次のとおりだ。

創業時から功労者であるAさん。会社の成長に人の採用が追いつかず、Aさんは1人で人事からマーケティングまで、何から何までやっていた。その後、会社は成長し、Aさん1人の能力では、回っていかなくなった。そこで、新しい人を外から雇い、 Aさんを降格させることにした。あなたは、Aさんにどのように降格の事実を伝えるか?
Bさん(CEO)とCさん(COO)は共同創業者兼取締役。ベンチャーキャピタルが投資をする条件として、取締役に残るのはBさんだけだと要請してきた。あなたがBさんだったら、どのようにCさんにその事実を伝えるか?
伝説的な起業家が多数来校。写真中央はインテル社の創業者、アンディ・グローブ氏

 

いずれのケースも、ベンチャー企業には付きものの複雑な人間関係を象徴している。

グロースベック教授は必ず、不利益を被る役を演じ、説得する側の学生に本気で挑んでくる。

「こういう難しい局面では、最初、相手が快く思うことを先に言って、気持ちをほぐしてから、本題に入っていくのがいいと思っていました。ところが、 教授は、『結論から先に言いなさい、その後、相手の言い分を聞きなさい』と言うのです。そして、『鏡の前で何度も予行演習しなさい』と。日本人の僕でも驚くほどの、細やかな心遣いを教えてくださいます」

石倉さんが、この授業で学んだのは、リーダーシップに解はないということだ。

「僕は、この授業を受けるまで、何でも『日本』『アメリカ』という国や文化の枠組みで物事をとらえていました。リーダーシップに関しても、『日本流』『アメリカ流』と、国別に理想的なリーダーシップスタイルが存在するのではないかと。でも、一流のグローバルリーダーシップとは、国や文化の垣根を超えて、人を導いていくことです。そのために、リーダーとしての人格を磨くことが大切なんだということを学びました」

リーダーシップを学ぶには、理論よりも実践。だからこそ、スタンフォードでは、ロールプレイ演習を重ねるのだ。

石倉さんは、グロースベック教授が、この授業の最後で語った言葉が忘れられない。教授のリーダーシップ論を凝縮した言葉だ。

「つねに人から信頼されるリーダーとして、正直(authentic)であることを心掛けなさい。(中略)何事も正直に伝えることがいちばんだ。相手にとって受け入れがたい決断をしたときは、逆に、ストレートに言うこと。でも、同時に、相手の心を気遣う姿勢を忘れてはならない」

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