特徴的なのは、スタンフォードの卒業生が起業した会社の実例が、ケースとして出題されること。そして、授業の最後には、必ずご本人が登場する。たとえば、石倉さんの印象に残っているベンチャー企業のケースは次のとおりだ。
いずれのケースも、ベンチャー企業には付きものの複雑な人間関係を象徴している。
グロースベック教授は必ず、不利益を被る役を演じ、説得する側の学生に本気で挑んでくる。
「こういう難しい局面では、最初、相手が快く思うことを先に言って、気持ちをほぐしてから、本題に入っていくのがいいと思っていました。ところが、 教授は、『結論から先に言いなさい、その後、相手の言い分を聞きなさい』と言うのです。そして、『鏡の前で何度も予行演習しなさい』と。日本人の僕でも驚くほどの、細やかな心遣いを教えてくださいます」
石倉さんが、この授業で学んだのは、リーダーシップに解はないということだ。
「僕は、この授業を受けるまで、何でも『日本』『アメリカ』という国や文化の枠組みで物事をとらえていました。リーダーシップに関しても、『日本流』『アメリカ流』と、国別に理想的なリーダーシップスタイルが存在するのではないかと。でも、一流のグローバルリーダーシップとは、国や文化の垣根を超えて、人を導いていくことです。そのために、リーダーとしての人格を磨くことが大切なんだということを学びました」
リーダーシップを学ぶには、理論よりも実践。だからこそ、スタンフォードでは、ロールプレイ演習を重ねるのだ。
石倉さんは、グロースベック教授が、この授業の最後で語った言葉が忘れられない。教授のリーダーシップ論を凝縮した言葉だ。
「つねに人から信頼されるリーダーとして、正直(authentic)であることを心掛けなさい。(中略)何事も正直に伝えることがいちばんだ。相手にとって受け入れがたい決断をしたときは、逆に、ストレートに言うこと。でも、同時に、相手の心を気遣う姿勢を忘れてはならない」
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