「欧米、特にアメリカでは、難しい局面に立たされたとき、人とのコミュニケーションに最も気を使わなくてはいけないんだなと気づきました。
僕は会社の起業直後というのは、会社の製品・サービスに情熱を注ぐべきだと思っていましたが、組織のリーダーは、組織のマネジメントを最優先に考えるべきで、そうすることで、初めて、働く人たちが製品やサービスの向上に集中できるのだと実感しました」
スタンフォードを卒業した暁には、このリーダーシップスキルを糧に、アメリカでの起業を成功させたい、と強く思ったそうだ。
メンターは、学生の「投資価値」も見ている
石倉さんが、スタンフォードに在学中、最も「刺激を受けた」出会いは、スタンフォード大学ビジネススクールの卒業生、レオン・チェンさんとの出会いだ。
スタンフォードには、在学生のために「メンター制度」が設けられている。学生が「こういう卒業生に会ってみたい」と希望するプロファイルを登録しておくと、学校が最も適した相談相手を割り当ててくれるシステムだ。
メンターは、学生のために、学業での悩みや卒業後の進路など、親身になって相談に乗ってくれる。
石倉さんのメンターとなったレオン・チェンさんは、09年にスタンフォード大学ビジネススクールを卒業。中国系アメリカ人だ。KAI Pharmaceuticalsという製薬会社の共同創業者で、12年に、KAI社をアムジェン社に約3億ドル(約250億円)で売却したことで大きな話題となった。いわば、大成功した若き起業家だ。
チェンさんは、現在、スカイラインベンチャーズというベンチャーキャピタルの共同経営者を務めている。
石倉さんがチェンさんを訪問したのは12年2月。「せっかく学校が割り当ててくれたのだから」と軽い気持ちで会いにいったら、チェンさんの言葉や生き方に圧倒されてしまったという。
「ヘルスケアにおけるイノベーションについて議論させてもらったのですが、『何に投資すべきか』という考え方が、普通の投資家とはまったく違っていました。現在、多くの投資家が、リスクの低いビジネスに投資を集中させていますが、チェンさんは『だからこそ、今、技術リスクの高いサイエンスに投資するべきだ』と」
石倉さんは、このとき、チェンさんが、スタンフォードのミッション(世の中を変え、組織を変え、世界を変えること)をそのまま体現していることに気づいたのだという。
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