なぜ今、「綱引き」がブームなのか 意外なチームスポーツに燃える人々

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試合は最初からガンガン引くチームもあるが、まずはお互い探り合い、持久戦に持ち込む戦術が主流のようだ。時間は無制限。30秒程度で終わる試合もあれば、3分程度の長丁場もある。

8人の牽引力は、4~5両の列車を動かす程

ちなみに、綱引で生じる“引っ張る力”は、どれくらいのものだろうか。

エキシビジョンの試合には、女性チームが参加。女性8人に対し、地元の小中学生数十人という極端な対戦でも勝利し、会場を沸かせていた

綱引では選手の合計体重によって階級が分かれているが、男子の場合、日本での主流は600kg級だ。そのトップレベルチームの牽引力は、およそ1万1760N(1200kgf)といわれる。

調べたところ、選手8人の牽引力は、4~5両の列車を移動させる車両移動機の力とほぼ同じであることが分かった。

一見、互角だったとしても、なぜ勝者チームは綱をぐいぐい引き込むことができるのか。何試合か観察すると、一触即発の駆け引きが見えてくる。

攻める側は息を合わせて、右、左、右、左と細かく足を踏み締めながら綱を引き、相手チームにプレッシャーをかけていく。引っ張られると、相手側は足がやや浮いた体制に。そこを8人が息を合わせてさらに攻めていく。

無理やり力で引っ張るというより、相手の弱まった瞬間にリズムよく引き続け、スルスルと勝利を引き寄せるという寸法だ。

ただし攻め続けると、自分たちもバランスが崩れる瞬間が生まれやすい。攻められているチームは、大勢を低く保ちながら、相手のスキや“攻め疲れ”するのを虎視眈々と待つ。そのため、不利な状況だったチームが一瞬の隙を突いて形勢逆転し、見事勝利を収めることも珍しくない。

攻めるか耐えるかは、そのときどきに監督といちばん後ろのアンカーが相手の状況や綱の具合から判断して指示を出す。

力が互角だと、しばらくこう着状態で微動だにしないこともある。

綱引は先の見えない頭脳戦、心理戦でもある。時間無制限で、何が起こるかわからない面白さも醍醐味といえる。

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