「もっと抑えて!」「動け動け」「まだまだ!」「いけいけいけ!」
当初は両者とも一糸乱れずに引いているが、しだいに綱が「8'駆欧来」側に手繰り寄せられる。「下志津綱人」も息を合わせて足を踏ん張り、懸命にこらえていたが、結局4メートル引かれて、「8'駆欧来」に一戦を取られてしまった。
審判の笛が響き渡ると、「ああ」という失望の声と同時に、「やった!」「よし!」と喜びの声が聞こえる。
「綱引は、紳士・淑女のスポーツなんです」
その近くで、次の試合を控えた選手がマジックリンなど家庭用洗剤でシューズの底をゴシゴシとふいている。靴底に細かいチリやホコリが残っていると、滑りやすくなるからだ。
試合直前には、競技エリアでは係の人が入念にモップでチリを取り除き、選手はシューズにかけておいた白いカバーをそっと外す。豪快なイメージの綱引だが、こうしたデリケートな面もある。
正式な大会では、選手は襟の付いたスポーツシャツ、ショートパンツを着用するのが決まりで、試合後は、対戦選手とのハイタッチがマナーとなっている。
「綱引は、紳士・淑女のスポーツなんですよ」と、近くの選手が教えてくれた。
社団法人日本綱引連盟によれば、おおよその競技人口は、男性は1万2000人、女性は5000人程度という。運動会シーズンになると、「どうしたら勝てるのか」「できたら指導者を紹介してほしい」などの問い合わせが増えるそうだ。
そんな綱引のルールは至ってシンプルだ。
選手は8人対8人で勝負に挑む。ほか交代要員2人と監督、トレーナー(兼任可)が必要で、それで1チームとなる。選手は綱を持って用意をし、審判の合図で試合がスタート。先に自分のほうに綱を4メートル引っ張ったチームが勝ちとなる。
腰に装着する保護ベルトはOKだが、手袋は禁止。競技中は審判に、故意の床への座り込みや、ひざや腕を使ってロープが動かないようにするロッキングなどの反則を3回カウントされると負けとなる。
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