以前のコラムでも書いたが、今はトップティア(一流)の若者は総じて外資系のグローバルキャリアを志向している。一方、優秀な若手が活躍できずクオリティがどんどん落ちていく政界や中央官庁からは若者の足が遠のいている。国の頂点を目指して、エリート同士が激しい競争を展開する中国共産党に比べ、指導者の人材募集の入口からして負けている気がする。
当然日本にも優秀な政治家や官僚は大勢いるのだが、周囲に足を引っ張られて政界や官庁では芽が出ず、外部に飛び出していく。
ちなみに外資金融の友人の中で憧れの仕事を話すときは、冗談も込めつつ「中国共産党の幹部」と言うのだが、「日本の政治家になりたいか」と聞くと、「冗談じゃない」という反応が返ってくる。新しい優秀な人を引き付け、彼らをサポートする体制のない業界や会社が滅びるのと同じことが、日本の政界で長期間起こってきたのだ。
父親の足下にも及ばない世襲議員と世襲レスラー
多様化する有権者の要望に、政策のサプライヤー側(つまり政治家)が、まったくついて行けないのはなぜだろうか。
理由の一つは、政治家の選別プロセスに十分な競争原理が働いていないことにある。ビジネスの場合、新規参入者が“変化できない既存のプレーヤー”から市場を奪っていくのだが、政治の場合、二世議員、三世議員といった世襲議員が多く、“選挙地盤”という参入障壁がそれを阻む。
政治もプロレスも昔の選手のほうがクオリティが高く迫力とカリスマがあったし、ファンからも有権者からも尊敬されていた。しかし後継者の選別を誤り、自分の子供や孫に権力と既得権益票を引き継がせてしまっている。これでは、既得権益打破が進まず、政治家のクオリティが低くなるのは当たり前だ。
日本の政治家は「中国は一党独裁だ」と言って批判するが、中国ではさまざまな政治腐敗が問題になっても、共産党トップの世襲は絶対に認めない。それこそ巨大な政治腐敗と停滞の温床になるからだ(なお毛沢東の息子さんは朝鮮戦争で戦死した。それが世襲が実現しなかった理由だという人もいる)。
ちなみにプロレスラーも父親プロレスラーのいわゆる“サラブレッドレスラー”に人気が集まるが、父親レスラーの足元にも及ばないケースが大半だ。同様に政治家を選ぶときも、江戸時代から続く“我らが城下町のお殿様信仰”から脱却しなければならない。
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