ハーバード卒であらずんば、人にあらず!? エリートが築く「学歴ブロック経済圏」

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グローバル金融の世界は、巨額の資金と極秘情報を扱うことが多いので、エリート内輪サークルで築き上げた何十年の関係がビジネスをするうえでの“信用コスト”を大きく引き下げてくれる(その代わりに部外者には高い参入障壁が築かれる)。

ご存じのように、金融の大きな案件ではデューデリジェンスに巨額のコストをかけるが、学友やご家族を巻き込んだ信用というのは、こういう莫大なコストを大幅に引き下げてくれるのだ。こうして各主権国家がつくるブロック経済よろしく、学歴や職歴を通じた“学歴ブロック経済圏”を作り出すことによって、他者が参入するうえでの高い参入障壁を築き上げるのである。

リーダーを尊敬する欧米、エリートを尊敬する日本

ちなみに良家の出身でいい大学を出たからといって、海外のトップティアのエリートたちは満足しないし、彼女たちが望む最高の仕事は約束されない。

はっきり言ってプライベートエクイティの場合、ファームによっては上から下までほぼ全員がハーバードかスタンフォードのMBAを持っており、たまに愛嬌でシカゴ大学ブースビジネススクールやペンシルバニア大学ウォートンスクールの卒業生がいたりする。そして彼女たちは、コラムの冒頭で申したように、大学を優秀な成績で卒業しており、今までエリートキャリアの最前線を30代半ばまで突っ走ってきた人ばかりだ。

しかし今までエリート街道を突き進んできた人のなかでも、自分の強みを知っていてキャリアを決め打ちできる人は、その方面で独立して業界の新たなスタンダードを打ち立てるリーダーを目指す。これに対し同じくらい賢いのだが、組織の中で決められたコースで勝ち残るために必死に戦うだけの人は、トップティアの人材とはみなされない。

よく言われることだが、日本社会はどうも敷かれたレールの上での競争でトップを走るエリートを尊敬するが、レールを外れて新しい道を作り出すリーダーを叩く傾向にあるように思う。これがベンチャー企業やベンチャーファンドの異様な少なさと、官僚機構の肥大化及び政治改革の停滞につながっている。

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