ここまで読んでいただければ、テストのプロが作成した、実用重視の英語統一試験を大学入試に導入することの重要性は明白なはずです。
新しいテストの導入に当たっては、韓国の「NEAT」という大実験が参考になります。国がテストを実施し、政府、ソウル大学、高麗大学など複数の機関が開発にかかわっているNEATには3つの級があるのですが、肝となるのは主に高校生が大学受験のために受ける2級です。ローカル言語の韓国語は指示文だけで、ほとんどが英語のみ。パソコンに向かって受験する形で、Wはキーボードで入力、Sは音声吹き込みを行います。文法問題の出題はありません。
またNEATは高校2年生時に2回、3年生時に2回(そして浪人した場合はさらにもう一回)と、複数回受けることが可能です。つまり、大学受験時には、過去の最高スコアを提出する形になるわけです。
スコアは、LRSWごとにAからDの4段階で判定されます。まだ導入されたばかりで、スコアがどう使われるかは確定していませんが、Dが1つでもあると大学進学ができなかったり、大学や学部によって要求されるスコアが違ってくるようです。難関大学だとオールAが求めらるのかもしれません。国としては2015年に、大学入試の英語試験をこのNEATへ一本化させたい意向だそうです。
希望の星は、TEAPの導入
NEATが成功すれば、学校や予備校・塾、中高生向けのテレビやラジオの英語講座や参考書、幼児教育もすべてNEAT対策に向かうでしょう。これはつまり、4技能をバランスよく育む強烈な「ウォッシュバック効果」が生まれることを意味します。
この改革によって、18歳までの教育で英語力の基礎が十分できるようになるでしょう。また、大学に入ってからは就職を見据えてTOEICのSテストを受けたり、海外留学のためにTOEFLに集中したりすることも可能になります。
日本の英語教育がこのまま一切変わらないとすると、NEAT世代の韓国の若者が30代の働き盛りになる15年後には、英語力でさらに大きな差をつけられてしまうことは必至です。
英語教育をここ15年ほとんど放置してきた日本と、改革してきた韓国の違いはすでに如実に表れています。さらに今からの15年を放置する経済的余裕は、私たちにはもう残っていないのではないでしょうか?
英語力で大きく韓国に差をつけられてしまった日本ですが、実はNEATに匹敵する英語の入試試験が現在日本でも開発段階にあります。TEAP(Test of English for Academic Purposes)「アカデミック能力判定試験」と呼ばれるこの試験が導入されれば、韓国との差も埋められるはずです。
次回はTEAPの内容と、そのウォッシュバック効果が日本の英語教育をいかに変える可能性があるのか、をご紹介したいと思います。
(構成:山本航)
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