猪子さん、マッキンゼーは嫌いですか?(上)

すべてのビジネスはアートになる!

猪子:家電メーカーが音楽プレーヤーを出してたけど、気づいたらアップルが音楽プレーヤーを出し、さらにソフトウエアメーカーにとっては単に音楽はソフトウエアでしかないからスマートフォンが出た瞬間、音楽プレーヤーという存在そのものが消滅したじゃん。

ケータイも電機メーカーが出してたけど、気づいたらアップルとかグーグルとかマイクロソフトが中心になっちゃったじゃん。

そんな感じで、産業区分が無意味化するし、すべてがデジタルテクノロジーの固まりみたいになっていくと思うんだよね。

そうなっていったときに、でも一方で、情報化社会というのは情報の共有スピードがあまりに速すぎて、あまりにも激しいがゆえに、一瞬で情報を共有できてしまう。特に言語化できる領域や論理化できる領域というのは、再現しようとするときに情報として記述しやすいから、一瞬で共有できちゃうんだよね。

テクノロジーの領域というのは、実は言語化、論理化しやすい領域なので、すべてがテクノロジーの固まりみたいになっていくと、一瞬で共有できるようになる。すごいスピードで、世界中で共有していくから、差がほとんどつかなくなると思うんだ。

田中:はい、はい、はい。

猪子:そうすると、たとえばマッキンゼーの強みって、言語化できて論理化できるようなものじゃん? 情報化社会の前はマッキンゼーって、「神」みたいな存在だったでしょ? でも情報化社会が来たら、1980年代とか90年代にマッキンゼーが言ってたことって、ただの「ウンコ」みたいになったよね。

田中:アハハハハ! やっぱり嫌いなんですね。

猪子:いやいや、時代の話! 個人の好き嫌いじゃなくて(笑)。

田中:はい、大丈夫です。

猪子:マッキンゼーの売り上げとかは前と変わらないかもしれないよ。むしろ伸びてんのかな? なんか最近は「人間力」とかで勝負してるらしいじゃない。でも、社会における存在価値の低下っぷりっは、そこで働いてて感じてたはずなんだよね。

田中:そうですね。確かにそういう面はあるかもしれませんね。

猪子:それはマッキンゼーが言語化や論理化できる領域で勝負してたからなんだよ。80年代から90年代前半までのマッキンゼーのすごさというのは、情報の共有スピードが遅かったがゆえの特異性だったと思う。

ま、それは置いといて。何が言いたかったかというと、言語や論理で再現しにくい領域、もうちょっと人間側から言うと、テンションが上がったり、すごい感動したり、何らかのインパクトを受けるんだけど、その感動を言語で説明したり、論理で説明したりできないような領域、もしくは説明したところでほとんど意味がない領域。

そういうものは、説明しにくいがゆえに再現しにくい。再現方法を共有しにくい。再現方法が共有しにくいがゆえに差異を生むんだよ。競争の差異を。競争の差異を生むがゆえに、その領域が競争力の源泉になっていくと思うんだ。

(構成:上田真緒、撮影:尾形文繁)

──続きは11月20日(火)に公開します

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