その男、凶暴につき ヤバイ日本建設大綱<下> 猪子寿之・チームラボ社長に聞く
チームラボが創業した01年はITブームの真っただ中。しかし、猪子は渋谷・ビットバレーの集まりには出向いたことがない。ホリエモンこと堀江貴文にも関心がなかった。
今、振り返れば、ITブームとは肝心のITはそっちのけ、マネーゲームの狂宴だったと知れる。同じ東大卒の猪子とホリエモンの「起業後」を分けたもの。マネーと資本主義についての思想の違いである。
ホリエモンは「カネで買えないものはない」と言った。猪子も開発のために「カネはムダにあったほうがいい」と思う。しかし、「残念ながら、カネで買えないものが増えていくんですよ、情報化社会では」。
たとえば、世界最大のマイクロソフトが強敵・リナックスを買収しようにも、リナックスは企業でさえない。「ブリタニカ」を蹴散らしたウィキペディアも、買収できない。
あるいは、逆に、トヨタ自動車が買収されたとしよう。買収に反発して、トヨタの上から20%の社員がトヨタを離れたら、一瞬はガタつくが、トヨタは残る。
それは、トヨタが情報化社会以前=工業化社会の会社であり、その強さが多くを工場・流通網という資産に依拠しているから。
「だけど、グーグルの上から20%が辞めて第2グーグルを作ったら、第2グーグルのほうが第1グーグルに勝ちそうじゃないですか」。
情報化社会の2大要素、テクノロジーとクリエーティビティは人と文化に依存している。文化は人の集合であり、人はカネでは買えないのだ。
ちなみに、チームラボには賃金体系がない。報酬は、まずは「誉れ」である。
「彼、すげぇバリュー出てる、という誉れが社内に流通する。すると、給与会議で給与をちょっと上げようか、とか」。
ボーナスは全社一律。「クリエーティビティは金銭報酬に比例しない。あなた、純粋にカネのためだけで仕事してます?」。
日本的なるものの復権 目指せ!「おもろハイテク」
メディア・アートの新地平を切り拓きつつある猪子には、どうやらフツー人には見えないものが見える。
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