印象派はなぜ「スーツ族」を魅了するのか ブリヂストン美術館「気ままにアートめぐり」より

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ちなみに石橋は、美術品収集のほかに建築と庭造りにも興味を持ち、4つの美術館と2つの庭園を造った。竹橋にある東京国立近代美術館は、石橋が建て、国に寄贈したもの。今では考えられない、スケールの大きな趣味である。

コレクションはその後、印象派の前後の時代、20世紀のフランス美術、現代美術、古代エジプトにまで広がった。開催中の展覧会「気ままにアートめぐり」を見ると、所蔵品で美術の大きな流れをつかむことができる。

巨匠モネ、5年目の「睡蓮」

では出品作の中から、石橋を魅了した印象派の作品を見てみよう。

クロード・モネ《睡蓮》1903年

クロード・モネの《睡蓮》は、日本でも人気の高い連作の1枚。モネは人生の後半、30年にわたって睡蓮に取り組み、作風をどんどん変えていった。最初は池に太鼓橋が架かっている奥行きのある風景だったが、しだいに水面だけに注目するようになり、最後には睡蓮の形も定かではない抽象画のような絵になっていく。

この作品は睡蓮を描き始めて4、5年経った頃のもの。

「水面の手前に柳の枝がたれていて、かろうじてまだ奥行があります。色がきれいだし、自然の中にいるときの気持ちのよさを大切にしていますよね。モネは、絵には快感を呼び覚ます力があると信じていた。だからこの絵を見ると、自分が睡蓮の池の前にいるような感覚になるのだと思います」

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