米ヤフーを変える「科学脳」アプローチ マリッサ・メイヤー(ヤフーCEO)

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ライフハッカー、仕事ハッカーっぽいメイヤーは、日常の現場でもいろいろな方法論を生み出していたようだ。

社内プレゼンでは制限時間10分をきっちりとタイマーで計り、発言を記録する書記係の入力した文字がスクリーンに映し出される。プレゼンという、どこの企業でも行われているものを、時間と空間をコントロールすることで効率的にこなし、そこから最大限の結果を生み出すための工夫を行っているのである。

まるで「外科医がメスを入れるように」

ミーティングもそうだ。今話しておいたほうがいいことは先延ばしにせず、立ったままでもいいから5分、ミーティングを細かくこなしていく。オフィシャルな手順を踏んだ面倒なミーティングを後で行うよりも、そこここで、どんどん案件を片付けて先へ進む。それが開発を前進させ、加速化する方法なのである。

マイヤーのこのやり方は、ヤフー再建へのアプローチでもうかがわれる。

さる10月に行われた四半期決算報告会で初めて打ち出したマイヤーの戦略は、その意外さで関係者をうならせた。というのも、ヤフーは4年間に5人ものCEO交代劇を経てきたのだが、決まって「大コストカット」「大幅レイオフ」という方法が採られてきた。ところが、マイヤーは違ったからだ。

じっくりヤフーの現状を読み込み、そこから彼女が出した回答が、「エンジニアの半分をモバイル開発に配置する」「大きな企業買収はしない」というもの。そのうえで、ヤフーの強みであるニュース、メール、メッセージ機能を充実させ、広告収入を上昇させるという。

企業買収も、小さな新興企業を金をかけずに買うという。その技術を再建に役立てるわけだ。さっそく、社員が数人しかいないモバイル技術開発のStampedという企業を買収したことが報じられている。

それでも、やはりレイオフは避けられないといわれている。だが、そこでもまるで「外科医がメスを入れるように」、実に細かな人員整理をする計画であると見られている。よくありがちな「大鉈を振るう」のではなく、かなり計算された堅実なやり方なのだ。

マリッサ・メイヤーは、自称「ギーク」(オタク)である。外見はファッショナブルで華やかだが、その頭脳は科学とプログラムでできている。この新しいタイプのリーダーが、ヤフーをハックして改良することができるか。シリコンバレー全体が、それを見守っている。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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