ソフトバンク 孫正義 世界一への野望 売上高で世界第3位へ
「売上高で世界3位の規模になる」
ソフトバンクの孫正義社長は満面の笑みを浮かべた。
10月15日、ソフトバンクは米国携帯電話3位のスプリント・ネクステルの株式70%を取得し、2013年中に子会社化することで合意した。買収資金は201億ドル(約1兆5700億円)。10月1日に買収を発表したイー・アクセスを合わせれば、契約数は約9600万件となり、国内首位のNTTドコモ(約6000万件)を抜く。売上高は6兆3000億円に上る。
ソフトバンクにとって、1兆円を超える規模のM&Aは、06年にボーダフォン日本法人を1兆7500億円で買収し、携帯事業に参入して以来のことだ。
「借金がだいぶ減ったなというときに、どかっと借金を増やして、大概にせいと言われるかもしれない。借金の返済は可能なのか、と。(その)自信があります」
孫社長は笑顔でこうも言ってのけた。実際、ボーダフォン買収時と比べてソフトバンクの収益力は段違いだ。12年3月期の営業利益は6752億円と約10倍に拡大。フリーキャッシュフローは年間3000億~5000億円を稼ぎ出している。
ボーダフォン買収で膨らんだ純有利子負債(有利子負債−手元流動性)は06年6月末に約2・5兆円あったが、今年6月末で8000億円まで減っており(オンライン記事8ページ下段)、財務体質は改善している。
巨額買収への予兆はあった。今年4月には「負債の削減」から「成長」へ舵を切る趣旨の発言をし、注目されていた。孫社長は「スプリントに照準を合わせたのは数カ月前」と明かしており、その時点で買収を検討していたとみられる。
もちろん、今回の買収による負債は決して軽くない。格付け会社のスタンダード&プアーズやムーディーズは、ソフトバンクを格下げ方向で見直すと発表している。一方、市場関係者からは、「現在のフリーキャシュフローの水準から見て、過度な懸念要素はない」(アナリスト)といった声もある。