時代の実況者、古舘伊知郎が走りぬけた12年

政策を批判することは「偏向報道」ではない

自らの言葉で視聴者に語りかけた古舘伊知郎キャスターの12年とは?(撮影:尾形文繁)
自らの意見や思い、感じ方を、自らの言葉で視聴者に語りかけた古舘伊知郎キャスターが3月31日、「報道ステーション」における最後の出演を終えた。前任の久米宏と同じく、アナウンサーというしゃべりのプロからキャスターへ転身した古舘の12年間を明治学院大学文学部芸術学科の古川柳子教授が振り返る。

古舘報道ステーション、最後の7分38秒

GALAC6月号(5月6日発売)の特集は、「さらば平成のキャスターたち」「震災5年をどう伝えたか」の2本立て(上の書影をクリックするとブックウォーカーのサイトにジャンプします)

花束贈呈も、儀式的な送る言葉も、奇をてらった演出もなかった。無遅刻無欠勤で「報道ステーション」を勤め上げた古舘伊知郎キャスターは最後はしっかりカメラと向き合い、想いの詰まった見事な一人語りで12年間の幕を引いた。

毎日毎日、目を通し続けた視聴者からの膨大なメール。賛辞に喜び、徹底的な罵倒に傷つきながら、結果そのすべてが自分を育ててくれたと思えるようになった心境と感謝。「圧力」による降板説を明確に否定しながら、返す刀で、以前より報道番組で自由にものが言い難くなっている空気も指摘。人が皆空気を読み一方向に流れる時こそ、「水を差す」行為や言動が必要だとする言葉を引きながら、「つるんつるんの無難な言葉で語られた番組などちっとも面白くありません」と力をこめる。人間が情熱をもって番組を創れば多少の偏りは生じるけれど、全体的にほどよいバランスをとればいい。

12年続ける中で育ってきた「言うべきことは言う」という報道ステーション魂を引き継いでほしいと、後任の富川悠太キャスターにエールを送る。視聴者には新しいキャスターや番組を長い目で見守ってもらいたいと懇願し、最後に「皆さん、ありがとうございました!」と深く頭を下げた、刹那、画面はCMに切り替わる。最後の一秒まで語りつくした7分38秒間。実に、実況の達人古舘伊知郎らしいファイナルだった。

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