英国最大の鉄道計画に日立が切り込めたワケ キーマンを直撃
--お客さんと価値を分かち合うというのは?
大きくなった会社にありがちなのは、「うちのこういう製品をこういうスペックで、こういう納期なら売ってやる」というような意識。そういうことではなくて、お客さんの要求をできるだけ大きく取り入れる。そうすると結果的に新製品になってしまうんだけれども、お客さんの要求を受け入れて設計する。そういった思想ですね。
--英国で最初2回続けて失注したのは想定外でしたか?
日本の信頼性と競争力のある価格を提示すれば取れると思ってたんですけど、欧州は単にプロジェクトを買うだけではなく、長期ビジョンできちんと現地で長く事業をやってくれるのかという視点で、つまり発注の視点が(想定とは)ちょっと違っていた。
それから、鉄道というのは製造規格というのがあって、英国の鉄道などは歴史も古くて1つの文化になっているんですね。日本には立派な新幹線があるといっても、向こうで本当に日本と同じ信頼性でちゃんとできるのかというのがお客さんの疑問で。それで、日立の鉄道は「ペーパートレイン」と揶揄されてしまった。
要するに新幹線といったって、日本の規格で日本の枠組みで日本の環境に合ったシステムだろうと。日本の新幹線は40年の歴史があるからこれでいいだろうというのではダメで、欧州、英国の規格にきちんと合致していることを証明しなければならない。それをやらなければ、注文は取れない。
--そこで古い車両に装置を載せて、できることを証明したんですね。
リース会社がパートナーとして(協力してくれた)。ご存じのように英国は鉄道資産を保有しているのがリース会社なので、そのリース会社が持っている古い車両、つまりリース会社にとっては、もうおカネを稼げなくなったような古い車両を提供していただいて、われわれの電機品を積んで走らせた。これが計画書どおりにオンタイムで、難しいと言われていた安全認証もきちんと取れたので、日立が言っていることは間違いないという評価をいただくことができた。