中国は「長い冬」に突入するという。『中国大停滞』を書いた国際公共政策研究センター理事長の田中直毅氏に、理由を聞く。
──なぜ、「長期にわたる停滞への入り口にすぎない」のですか。
積み重なる過剰生産能力、不良債権、金融リスクの解消プロセスについて、共産党の指導層は明確な具体策を持ち合わせていない。また投資主導型から消費主導型への経済転換、イノベーション、都市化による経済発展を軸とする習近平改革が、「新常態」への移行に結び付くことはないだろう。
中国経済は2014年から悪化し続けている
──中国も「中所得国のわな」にはまるのですね。
「結社の自由」を認めず、市場の働きを理解しない指導者層の下では、発展の芽が押し潰されるという基本的な限界があるからだ。
──所属のシンクタンク独自で、中国の経済動向をとらえる指標を開発しています。
中国のGDP(国内総生産)統計も、また、より実態に近いとされる「李克強指数」も現実を映してはいない。国際公共政策研究センター(CIPPS)では、2011年から中国経済について真実を写し取るプロジェクトという意味で「写真機プロジェクト」と名付けた作業を開始した。中国に展開するほぼ60の日本企業の事業拠点に対して、簡単な質問を毎月繰り返す。この5年間、景況感と売上高の足元を適切に写すことができた。
その中国CIPPS指数によれば、2014年の初めからほぼ一貫して中国経済は悪化し続けている。2015年の年初に多少ジグザクはあったものの、大きな流れは退潮だった。
──おしなべて厳しい状況と見ていますね。
日本のビジネス界の方々と話すと、今3点からの指摘が多い。一つは、中国の経済政策が何を目指しているのかよくわからないこと。二つ目は、諸外国からの首脳の呼び寄せ、つまり招集能力が著しく低下してきていること。もう一つは、ここまでするのかという人権抑圧だ。
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