アジア人の祖先はどこから来たのか
──ホモ・サピエンスの「海岸移住説」の否定から話は始まります。
これは、アジアでは南岸伝いにまず移住し、遅れて内陸に拡散したとする説で、欧米の研究者を中心に論じられ、受け入れられてきた説です。アイデアとしては面白いんだけど問題の多い説で、裏付けとなる証拠がない。それに、進化し新たな能力や創造性を備えたホモ・サピエンスが、2万年もの間、ただ海岸にへばりついていたとは考えづらい。
そこで各地の遺跡証拠を厳密に解釈し、確実なものだけをプロットしてみると、4万7000年くらい前に爆発的に遺跡が出現する。アジアでは最初から南北に同時拡散が起こっていて、全体的な傾向がクリアに説明できるようになったのです。
少し細かい話をすると、ホモ・サピエンスが世界に大拡散する過程で、ヨーロッパに移住したクロマニョン人は洞窟に壁画を残した。ところがアジアではそうした芸術作品があまり出てこない。では僕らの祖先は何をしていたんだろう、そこをきちんと考えたいという意識がずっとあったんですね。ヨーロッパの話は連中に任せといて、アジアのことはアジアを軸にきちんとやりたいと。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら