日本人の祖先は、驚くほど勇気に溢れていた 「沖縄への渡航」は人類史上最大のチャレンジ

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僕らの目的は、あくまでも祖先の行動を可能なかぎり再現すること。証明はできないですよ、だけど可能なかぎり正しい答えに近づきたい。そうすると、僕らの祖先たちが本当に何をしたのかがだんだんわかってくると思うんですね。細かいことはこれから実験して確かめていくんだけど、明らかなのは、僕らが漠然と思ってるよりすごいチャレンジだったってことです。技術は素朴でも創意工夫を持った人たちだった。

「原始人」と見下すことなかれ

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──デモで作った全長3メートル、1人用の草舟を展示していましたね。

僕らのは「到達」が目的ではなく「移住」の再現だから、相応の人数がいないと成り立たない。人口を維持するにはどれくらいの人数が必要か、今シミュレーションしている最中です。当然女性もいないとダメで、女性もこぎ手として一緒に舟に乗ります。

実験航海でもし僕らの舟が失敗したら、それは彼らが僕らの考える以上の技術を持っていたということ。僕らが目指すのはそこなんです。草舟とはいえ、あれ一つ作るのにも縛り方とか組み合わせ方とかの知識やコツが詰め込まれてるんです。

プラス、精神力もないと渡れない。今年実験する与那国から西表への航海も、計算上25時間、1昼夜寝ずにこぎ続けなければならない。来年の台湾から与那国への航海には3日かかるんですね。それだけでもやろうという意志がないとダメ。そういうチャレンジをした祖先たちがいて、おかげで今の僕らがいる。原始的な道具しか持たない原始人と下に見られがちだけど、本当にそうなのかっていうところにたぶん行き着く。祖先がやった挑戦を純粋に再現することによって、僕らが拾えるものはもっと大きいと思うんです。

──究極的に解明したいのは、日本人の成り立ちを超えた、広く人類の歩んだ道ということ?

その大きなことを知る手掛かりが日本にある、ってことですね。対馬から渡ろうと沖縄から渡ろうと、海を越えないと来られない。しかも沖縄への渡航は人類史上最も困難な、とんでもないことへの挑戦だった。こんなに驚異的な、身が震えるような話が自分たちの足元にあった。これはもう放っておけないですよね。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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