中国は長い「冬の時代」に入ろうとしている 「中国大停滞」を書いた田中直毅氏に聞く

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──習総書記は今、軍事のトップでもあります。

1代前の胡錦濤体制は9人の政治局常務委員がそれぞれ担当を持ち、担当の立場でものを言う。ほかの担当がそれはおかしいというのは難しかったらしい。常務委員で構成するチャイナナインをセブンに減らしたが、同じモデルであればそれぞれが管轄権限を持つ縦割りは変わらない。そのままのレジームではもはや正当性を維持できないという危機感があったということだろう。で、それは取らず、雍正帝にまで戻ったというのが私の理解。

日本の中国研究は遅れている

『中国大停滞』(日本経済新聞出版社 1800円+税/341ページ) 書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

──習総書記の演説に加え、幹部の発言に基づく解析が多いですね。

習総書記は国際的にもどういう人物かがはっきり解明されていない。頼りになるのは、彼の発言だ。耳を澄まして聞けば、かなりのことがわかる。だから、この本はコンメンタール(論評)でもあるといえる。ほかに習総書記を判断する材料がないから、私の視点から発言のコンメンタールにして論述した。

──日本の中国研究は遅れているのですね。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード基金に対するコメントに中国理解の不十分さが端的に表れている。ウィン・ウィンの関係を周辺諸国との間に確立するのが目的であるのに対し、ニューカマーの中国が国際通貨基金やアジア開発銀行に対峙して新しい秩序の担い手として登場するというたぐいの説明で済ましている。それは実態からして違う。

──どうすれば。

中国研究者の層を厚くするしかない。今回、京都学派の宮崎市定について書いたが、そうした物事を根底的にとらえることが必ずしも継続していないのではないか。

──現代の日本人には「宮崎市定って誰?」では。

それは、とんでもない無視ではないか。

中国のこれからの10年を見れば、社会の変化のスピードはさらに上がる。中国自身も中国共産党も喫緊の課題にソリューションを生み出せないのだから。共産党も模索するし、中国社会も広くいろんな声が噴出するだろう。これまでより変化のスピードが高まらざるをえない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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