立場の生態系では安全と危険の区別もない--『幻影からの脱出』を書いた安冨 歩氏(東京大学東洋文化研究所教授)に聞く

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「東大話法」と、それを支える「立場主義」が日本を機能不全に陥らせているという。それにどう向き合えば回復できるのか。

──「東大話法」とは聞きなれない言葉です。

いわば頭がよくて権力のあるポストに就いている人が自分の力を行使するために用いる話法だ。無理やりでは、相手はその力がかかっている間だけ従うことになる。効果的に行使するには納得してもらわないといけない。仕方がないと思わせる言語体系といえよう。

──「歪められた言語」ともあります。

原子力関係者は、「事故」を「事象」、「老朽化」を「高経年化」と言い換え、そのほかにも無数の言い換えをする。そうやって事実を隠蔽しようとすると、他人ばかりか自分自身をもだますことになる。

言葉は包丁みたいなものだ。包丁がないと料理はできないが、振り回すとケガをする。言葉も同じで、言葉で人を殺すこともできれば、生かすこともできる。それを、人をコントロールするメソッドとして悪用するすべを人間は持っている。言葉だけで相手を誘導して思いどおりにすることはまずできないが、ほかの方法と組み合わせると十分に可能になる。最も組み合わせやすいのが、権威や権力。オブラートに包んだ言葉とセットにすると、権威や権力はスムーズに作動する。その体系を東大話法と命名した。

──なぜ東大なのですか。

それは、東京大学の学問がそうできているからだ。専門性と深くかかわっている。現場で起きている厄介な物事を解決しようとしたときに、ある着眼をしてそこを問題として取り出す操作をしないと専門知識は提供できない。現場をある方向から切り取ったときに適用可能になる。しかし、実際には専門家に任せたからといって解決するわけではない。切り取った瞬間に「定義された問題」になるが、専門家は定義された問題には対応できても、事態や状況全体には対応できないからだ。

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