立場の生態系では安全と危険の区別もない--『幻影からの脱出』を書いた安冨 歩氏(東京大学東洋文化研究所教授)に聞く

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日本では従来、立場のある人は役を果たすために何をやってもいいし、何でもしなければいけない、というのが社会倫理だった。立場を守るため死んでもいいわけで、過労死という現象が起きるのは、役を果たすためにはどんなことでもすべきであるというその倫理が背景にある。

──人間は立場の埋め草?

大事なのは、「立場の生態系」は人間の判断を含んでいないことだ。立場を生態系が自動的に動かす暴走システム。立場上の発言、行為を繰り返している結果として生み出される立場システム全体がどちらの方向に行くかを、日本人はもはやコントロールできなくなっている。立場の埋め草は人間ではなくて、立場の利害を代表する存在だから、立場が失われることは自分が死ぬことだと思い込んでいる。

そういう人たちは必死で原発を再稼働させようとする。立場の生態系を認めているかぎりは、原発はまた動く。元の状態に戻っていく。

──どうすればそのシステムから抜け出せるのでしょうか。

立場の生態系と、東大話法で生み出されている言語体系に取り込まれていると、安全と危険の区別もできなくなる。このシステムの崩壊はすでに始まっている。これをチャンスと思えばやり方はいくつもある。

やすとみ・あゆむ
1963年生まれ。京都大学卒業。住友銀行を経て、京大大学院経済学研究科修士課程修了。京大人文科学研究所助手、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス滞在研究員、名古屋大学助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東大東洋文化研究所准教授、2009年より現職。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2012年9月22日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

『幻影からの脱出』 明石書店 1680円 299ページ


  
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