40歳女性、真剣ネット婚活の「意外な結末」 自力で手に入れたマンションも職も手放し…

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「掃除の仕方が間違っているとか、細かいことをあれこれ言うんです。ちゃんとやっているのに……。話し合おうとしてもなかなか通じない。あるとき私がキレてしまって『ふざけんな』と怒鳴ったんです。そうしたら、夫は『ごめんなさい』と謝って来ました。それからは私も少し落ち着きました。夫は短気だけどさっぱりした性格です。何かに腹を立てているときは距離を置いてそっとしておけばいいだけ。翌朝には何事もなかったような顔をして挨拶をしてきます」

いい話だ、と筆者は思う。世代も生育環境も異なる他人同士が出会い、一緒に暮らしていくのはキレイごとでは済まない。一度ぐらいは激しくぶつかり合う衝突をしなければ、有効なコミュニケーション方法すらも見つけることはできないのだろう。

100%理想どおりではない、それでも…

短気でマイペースな政孝さんにも、よいところはたくさんある。満員の通勤電車に耐えられずに会社を退職した由紀子さんを「お疲れケーキ」で労ってくれた。今でも仕事帰りに花束を買って来てくれることがある。

「テレビを観ながら一緒に笑うこともできるし、彼が変な格好をして踊ってみせてくれることもあります。小学生レベルのアホな踊りですけどね」

由紀子さんはいま、自宅近くの薬局に就職して仕事を再開している。政孝さんとの休みは合わせにくいが、年に一度は旅行をする約束だ。少しお金を貯めて、5年後を目標にしてタヒチへの新婚旅行も計画している。

ネット婚活では悔しい想いもたくさんした。「理想の男性」とは結婚できなかった。新生活を始めるために捨てざるを得なかったものも少なくない。それでも由紀子さんはいま、想定外の新婚生活を楽しんでいる。関西にもカナダにも北海道にも適応できた由紀子さんならば、きっと幸せになれるだろう。

恋愛と結婚は違う、恋愛しなくても結婚はできると筆者は思っていた。でも、由紀子さんの話を聞いて考えを少し改めている。恋する相手と一緒だからこそ、困難を乗り越えて共同生活を営むエネルギーを保てるのかもしれない。 

この「晩婚さんいらっしゃい!」企画では記事に登場してくださる”晩婚さん”を募集しています。35歳以上で結婚して5年目くらいまでの方(年齢はご夫婦どちらかが該当すればOK)でご協力いただける方は、こちらの申し込みフォームよりご連絡ください。

 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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