いいぞ、由紀子さん。失恋の悲しみを怒りに変えて前向きな行動に移るのだ。2月19日公開の記事と同じパターンである。晩婚さんは長い独身生活に慣れ親しんできたため、これぐらいのショックがなければ現状を打破することはできない。
由紀子さんは再びマッチングサイトに登録した。ちょうど40歳。今度は有料会員になり、プロフィール文も日本語で真剣に書いた。結婚前提でない方はお断り、という文章も添えてある。しかし、3週間ほどであきらめモードに入ったと由紀子さんは振り返る。
「メールを送っても返信をくれない人ばかりで、あちらから送って来るのは50代、60代のおじさんだけ。しかも、昔の携帯電話で適当に撮ったような顔写真をプロフィールに載せている人です。無視していると『返信もしないなんて失礼だ!』とお叱りメールが来たり……。現在の夫に出会う前にひとりだけ会った人は、会社帰りのお父さんみたいな風貌、しかも下品でした。下ネタばかり話して、付き合ってもいないのに私のマンションに泊まりたがるのです。もちろん、お断りしました」
「条件外」だった男性からの熱烈アプローチ!
そんなときにメールを送って来たのが後に夫になる政孝さん(仮名)だった。都内在住。由紀子さんより11歳年上のバツイチ。高校を卒業して以来、工場で技師として働き続けている。再婚済みの前妻との間に2人の子どもがいるが、離婚してから音信が途絶えているという。
「10歳上までの大卒男性という条件で検索をかけていたので、私からは見つけることができない人でした。でも、メールの文面は感じがよく、返しもうまい。ブロードウェイのミュージカルが好きな点でも一致して盛り上がることができました。直接会いたいな、と思っていた頃に札幌に来てくれることになったんです」
待ち合わせ場所のお店に入ってきた政孝さんは、年齢よりも若々しく見える男性だった。笑顔も素敵だと感じた由紀子さんは、「お付き合いしてもらえますか?」という政孝さんからの率直な言葉が嬉しかった。雄介さんと別れてからわずか2カ月後のことだ。人生は何が起こるのかわからない。絶望してはいけないのだ。
「お付き合いが始まってからは、夫はうちに泊りがけで遊びに来てくれました。私はスノボ、彼はスキーをやるので、北海道の冬も一緒に楽しむことができます。春には私が東京に行って夫の家族と会いました。5月の連休には夫がうちの親に会ってくれて、10月末に結婚。私の希望で札幌で式を挙げさせてもらいました」
東京での新婚生活はバラ色とは言えなかった。気に入っていた札幌のマンションを売り払い、車や家具、家電もすべて処分し、2匹の猫だけを連れてきたのだ。札幌で勤務していた調剤薬局は東京の支店への転勤を許してくれたが、由紀子さんは慣れない満員電車での通勤に疲れ果ててしまった。それでも懸命に家事をする由紀子さんに対して、政孝さんは「ダメ出し」ばかりをする。
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