トランプの言葉はとにかくわかりやすい。「Make America great again」(アメリカは再び偉大な国に)といったようなシンプルなキャッチフレーズを駆使し、同じようなセリフを何度も繰り返す。具体的な戦略も案も示さず、「なぜ、できるのか」と問われれば、「それは俺だから」と切り返す。Boston Globe紙によれば、トランプの語彙は小学校4年生程度。ヒラリーが中2、サンダースが高2程度の言葉であるのに比べ、文節が短く、はるかに簡単で単純な言葉ばかりを並べることで、低所得、低学歴の有権者の心をわしづかみにしてしまったというわけだ。
NY Timesはトランプの発言9万5000語をすべて分析し、以下のような特徴を見出した。
メディアがトランプをたたけばたたくほど、逆に関心が集まり、露出も増え、メディア露出量はヒラリーの2倍以上。マスメディアだけでなく、Twitterなどのソーシャルメディアも徹底活用して、自己PRを絶やさず、コミュニケーションの「絶対量」という意味でも、ライバルを凌駕している。
危険なまでの感情喚起力
トランプの恐ろしさは、その圧倒的な感情喚起力だ。彼が好んで使うのが「problem(問題)」と言う言葉。「この国は実に問題だらけだ」が口癖で、いかに現状がひどい状態なのかをしつこいほど言及する。「メキシコから送り込まれる人は、問題をたくさん抱えた人だ。あなた方のような人じゃない。彼らはドラッグや犯罪を持ちこむ。彼らは性犯罪者だ」といったように、民衆の持つ恐怖心や怒りに火をつける。特にイスラムテロ組織に対する国民の心配や憂慮につけこみ、何か悪いことが起きている」「何か本当に危ないことが起きようとしている」と繰り返し、危機的な事態がひたひた迫っていると、たきつけるのだ。「よく新興宗教などに勧誘する方法として使われる「このままだとあなたの身に何か悪いことがおきますよ」といった“脅し”にも似ている。感情を喚起するコミュニケーション、特に恐怖訴求はヒトラーの人心掌握術にも使われた非常にパワフルなコミュニケーション手法だ。
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