大穴のはずが有力候補、トランプ旋風の行方 正直な暴言家が支持される理由とは?
ドナルド・トランプ氏の名前をはじめて聞いたのは、たぶん、前の世紀のことだ。つまり、この人は、アメリカ在住歴を持たないごく当たり前な日本人である私のような男が、なんだかんだで20年も前からその名前を覚えているほどの破天荒な有名人なわけで、してみると、そのトランプ氏が大統領選の指名候補争いに名乗りをあげたということは、わが国でいえば「お笑いタレント候補」の出馬に相当する珍事なのであろう。
が、その知名度と発言のトンガリっぷりで売っている素人有名人が、選挙戦のトップを独走していることもまた事実ではあるわけで、デカい選挙が、知名優位のメディア人気投票に収束する傾向は、どこの国であれ避けられない事態だということでもある。
有権者の心をつかむ「非常識な発言」
しかも、トランプ氏の人気は、事前の予想に反して彼がマトモな人間であったことを理由に高まっているのではない。逆だ。トランプ氏は、メディアや有識者の予測をはるかに上回る非常識な発言ゆえに、まんまと有権者の心をつかんでいる。
つい先日、トランプ氏は、パリで起きたIS(イスラム国)によるテロ事件に反応する形で、イスラム教徒の米国入国を拒否する施策の実現を呼びかけた。この非常識な差別発言は、米国内外からの巨大な非難の声を集めた一方で、彼自身の共和党内での人気をさらに引き上げる結果をもたらしている。