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3月8日に催された米大統領候補者選びのミシガン州予備選は、有権者の保護貿易的な姿勢が色濃く反映された結果となった。
同州で目立った有権者は工業地帯の労働者たちだ。彼らは自身の失業や低賃金といった問題について、外国からの安価な輸入品流入が原因だと決めつけている。政治家や経済学者がその結論は安直だと諭しても、彼らは聞く耳を持たない。
ミシガン州予備選の出口調査の結果では、同州の共和党支持者の過半数が、外国との自由貿易で雇用が失われたと感じている。その不満をくすぐり躍進したのが、不動産王のドナルド・トランプ氏だ。同氏はこうした労働者から4割以上の支持を集めて勝利した。同じく民主党の予備選でも、自由貿易で雇用が失われたと唱えるバーニー・サンダース氏が勝利した。
「怒れる白人男性」の矛先
トランプ氏らが支持を集めたのは、低賃金の工場労働者や教育水準の低い層からだけではない。アルコールやドラッグといった社会的病理への依存から抜け出せずに苦しむ貧困層からも同様である。
こうした「怒れる白人男性」たちは、問題の責任を単純に外国との貿易に押し付けがちだ。そのため、中国からの輸入品の関税引き上げや日本への「円安誘導」停止要求、メキシコ国境における壁の設置といった過激なアイデアをトランプ氏が掲げると、すぐ乗ってしまう。また、北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)といった協定をこれ以上は増やさないとするサンダースに対しても同様だ。
彼らが自由貿易に怒る衝動は理解できる。しかし認識が的外れであることも事実なのだ。実は過去数十年間で失われた工場内の業務のうち、貿易によって失われた仕事はごく一部だ。
製造業が衰退した根本的な原因は農家と同様、技術革新による生産性の向上なのである。たとえば1987年に100万ドル相当の製品を製造するには、労働者が17人必要だった。しかし、現在ではわずか6人で同じ製品を作れてしまう。
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